びーの独り言

どこいくの?どっか。

考古地域学を学ぶー戸沢充則の考古学

 この本は今年のGWに東北歴史博物館で買ったように思う。戸沢充則という名前は聞いたことはなかった。それなのになぜこの本を買ったかは今となっては思い出せない。
 戸沢氏は戦後に活躍し、明治大学の考古学の教授になった。最後は学長にまで上り詰めた。明治大学と言えば、岩宿遺跡の話を読んだ時に出てきた。岩宿遺跡とは日本で初めて旧石器時代の石器が見つかった場所である。アマチュアだった相澤氏が、それまで人は住んでいないとされていた地層から石器を見つけて、明治大学に持ち込んだ。因みに相澤氏(の奥さん?)と明治大学は仲違いしていて、岩宿には2つの博物館があったりする。
 戸沢氏は考古学者は石器の編年研究に明け暮れるだけではなく、その背後にある人々の暮らしを明らかにしなければいけないと主張した。また遺跡の発掘の際には地元の人に考古学に興味を持ってもらおうとし、考古学を生活の中の一部として根付かせようと注力した。最後に2000年に生じた旧石器捏造事件に対して、考古学会の信頼回復のため対応を指揮した。
 この本は8人の著者によって書かれていて、どの人も戸沢氏のことを尊敬してる様に見えた。考古学会はM会の人に聞いたところによると、派閥間の対立が凄くて大変らしい。岩宿遺跡の件もそれを象徴してるように感じる。偶然戸沢氏がネット上で「岩宿よりも前に山形の大隅遺跡が発見された」とエッセイに書いてるのを見つけたし。戸沢氏が九条科学者の会に入ってたのも微妙。戸沢氏が本当に本に書かれたような素晴らしい人物だったのか、ただの派閥の長だったのかはわからなかった。
 本題から逸れるが、考古学に科学的分析法が導入された箇所は興味をひいた。若狭歴史博物館でも展示を見たことがあり気になっていた。炭素年代測定法により今までより正確な年代の推定が可能になったり、地層の花粉の種類を検討することからその時代の植生を推定したり、土器に残った籾殻や焼け跡などから土器が何に用いられていたかを推定したり、石の組成から石の原産地がわかったり。これらはまさに今の私の守備範囲であり、私も何かできるのではないかと思った。
 この本は戸沢氏の活動を通して戦後に考古学が歩んできた歴史を描写している。考古学のアプローチ法は変わっても、根底に流れる飽くなき探究心には変わりはない。今日まで続く人間の営みを明らかにすることは、人間の本質を見つめることである。