びーの独り言

どこいくの?どっか。

2012/10/07(日)「原発2」

 朝9時に泉駅のレンタカーを借りた。車種は「ワゴンR」。残念なことに雨模様だった。
 原発アタックの前に国宝の願成寺白水阿弥陀堂を見に行った。大学友人Sに感化されて、国宝が少し気になり始めている。願成寺は平安時代藤原清衡の娘によって建立された。廻りは庭園になっていて、特に池が立派だった。鴨が気持ちよさそうに水面に浮かんでいた。阿弥陀堂は建物が国宝に指定されていた。茶色に葺かれた屋根が印象的だった。中には阿弥陀如来を中心に観世音菩薩と勢至菩薩持国天多聞天が鎮座していた。説明役のお坊さんがいるだけで他には誰もいなかった。正座をして阿弥陀如来と対峙した。無宗教の私だが、穏やかな顔を見ていると、心の中の煩悩が消え去り、心が洗われるようだった。人は根源的に何かにすがりたいのかもしれない。そういう効能はキリスト教も同じだけど、仏教の方がしっくりくる。昔から生活の中に仏教の教えが浸透してるからだろう。仏像を見てふいにやすらぐということは、普段の生活は西洋的な俗物にまみれてしまい、日本人のつちかってきた精神を忘れつつあるのかもしれない。そうならば、今こそ仏教が必要とされていて、これからはそういうブームが起きるような気がする。
 いよいよ原発アタックを開始。国道6号を北上。いわき市街を抜け、昨日の久ノ浜を過ぎ、広野も過ぎた。まだ普通に車は走っていた。8月まで検問があったJビレッジも通過。ここからは警戒区域は解除されたが、帰宅は許されていない。雨の中、白い合羽を来た人がいた。緊張が走った。合羽の人は山の上の建物に車を誘導していた。「一時立ち入り者はこちらへ」、身体を除染するのだろうか。しれっと通り過ぎておいた。「10km先富岡から警戒区域につき許可車両以外通行禁止」という表示があった。昨日のタクシーの運ちゃんが言うより距離がかなり長かった。メーターを確認してカウントダウンを始めた。周りにはまだ普通に車が走っていた。しかし、対向車の人は半分くらいマスクをしていた。思わず息を潜めて手で口を覆った。時折白い合羽を来て誘導している人がいて、そのたびにドキドキした。また、許可車両以外はUターン、と書かれた看板も何回か見た。だんだん進むのが怖くなってきた。危ないというより、警察に怒られるんじゃないか。いい年した大人が用もないのに来るような場所じゃない。メーターが残り3kmを切ったとき、前方にパトカーが2台横向きに止まっているのが見えた。きっとあれが検問だ。気持ちは臨界点を越えた。帰ろう。潰れたコンビニのある交差点でUターンした。すぐに大型バスとすれ違った。白い防護服にマスクをした人たちが乗っていた。どういう経歴の人たちが乗っているのだろうか?帰り道はずっと暗い気分だった。なんでこんなとこに来たのか。考えてみれば、ここは戦場みたいなところである。そんなとこに安易に入るなんて。行ってみなきゃわからないなんて想像力不足も甚だしい。馬鹿なことをしたと激しく後悔した。早く温泉に行って身体を洗いたかった。
 いわきには全国的に有名な「スパリゾートハワイアンズ」がある。これは一度行かざるえない。施設は予想に反して山の中にあった。とても巨大な施設だった。13時に入場、入場料は3150円。中は遊泳施設が充実しており超満員。水着を着た人だらけで、リュックを持ったおっさんはかなり場違いな感じだった。戸惑っていたらレンタル受付のおじさんに私服でも構わないと言われて安心した。
 13時半からは名物のフラダンスがあった。フラダンスのことは子供の頃から知っていた。今回せっかくだからぜひ見たかった。ここも大混雑。席がなかったので立ち見した。運よく正面の座席の真後ろに立てた。バンドマンが入場し演奏が始まった。舞台後方などにあるカーテンからフラガールたちが出てきた。フラガールは腰みの、へそだし、ビキニ、ロングの髪をポニーテールにしていた。ゆったりとして優雅な手と足の動き。長年見たかったものとの出会い、いろんな感情が湧いてきて目の奥がぶわっと熱くなった。歌が変わるとダンスのメンバーが入れ替わった。前半最後では、観客もステージに上がって踊った。なかなかの仕掛けだ。後半はいきなり打楽器の強烈なビート。筋肉ムキムキの男たちによるファイヤーダンス。これはまったく知らなかった。完全に意表をつかれた。火のついた棒をバトントワリングみたいにクルクル回し、火を手で掴んだり、食べたり。フラダンスより凄いんじゃないか?そして鍛えられた身体、きっと毎日厳しいトレーニングを重ねてるんだな。ファイヤーダンスの次は女性たちに戻り、ダンスはハワイからタヒチに変わった。ベリーダンスによく似ていて、激しい腰の動きが特徴だった。45分のステージ、立ち見でもあっという間だった。ちょっと宝塚にも似てたかも。長年の念願が叶った。来て良かった。
 風呂に入るために施設内を移動した。するとパネル展示があった。スパリゾートハワイアンズの歴史と映画「フラガール」の説明だった。スパリゾートハワイアンズは1966年に「常磐ハワイアンセンター」としてオープンした。いわきは常磐炭鉱で賑わっていたが、炭鉱が斜陽になってきたので、町の生き残りをかけて、当時憧れの場所だったハワイをモチーフとした施設をオープンした。「フラガール」はそのオープン時のエピソードを映画にしたものである。2006年の映画で年間邦画ナンバーワンに輝いた。別にいわきとハワイとの繋がりはない。よくここまで大きな観光資源に育ったもんである。今や町のシンボルとなってる。町おこしで一番成功した例だろう。
 大浴場に気持ちよく入った後は、ロコモコを食べた。それにしてもここにはものすごく人がいる。ビキニの姉ちゃんがゴロゴロいたのには驚いた。ああいう格好をするのはテレビの中だけだと思った。薄い布一枚で、下着はNGで水着ならOKか?しかも、水に濡れて肌に貼り付いている。見てるこっちの方が恥ずかしくなった。さすがハワイだ。
 スパリゾートハワイアンを後ろ髪ひかれつつ跡にした。最後に小名浜港に行った。小名浜といえば、水族館と北海道行きのフェリー。あまり時間がなくて車で流しただけだけど、とても大きな港だった。なんでこんなにでかいのかはよくわからないが。
 泉でレンタカーを返却したのは17時だった。当初予定では、原発を北から攻めるつもりだったが、すでにどうでもよくなっていた。宿は取ってないし、別のとこに移動するのも中途半端。思いきって千葉に戻ることにした。
 この2日間では、福島で何が起きて、どうなっているのか、を身をもって体感できた。半径20kmが警戒区域というのは、とてつもなく広範囲である。あれだけの地域が立ち入れなくなっているのは間違いなく国家犯罪である。東京電力という事実上の国策企業を隠れ蓑にして、迅速な対応が取れなかった民主党には速やかに退陣願いたい。誰もが早く復興して欲しいと願ってるのに、平時のやり方しかできない政治は明らかな機能不全を起こしている。またマスゴミはまったく信用がならない。政府や東京電力に偏った報道しかしていない。一体誰の見方なのか?これからは一人一人がいろんなことを自分の頭できちんと考えて判断しなきゃいけない。そういう複雑な時代になってると思う。