びーの独り言

どこいくの?どっか。

金閣寺

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

 三島由紀夫の第三弾。あまりにも有名な作品。昭和25年に僧侶の放火により金閣寺は焼けたのだが、それをモチーフとして僧侶の心理状態を描いている。後書きによれば、三島の告白に近いとされている。30歳のときの作品。
 熱すぎる。これに尽きる。よくもまあここまで心理描写ができるものだと。それがまた徐々に狂気を帯びてきて、最後には放火に至る犯罪者心理を炙り出してて、なんだか背筋が寒くなってしまうのだ。三分の一くらいはよくわからない。けど、物凄く読み応えがある。
 主人公には障害があり、それが強烈なコンプレックスになっている。何か事を起こそうとするとき、美の象徴である金閣寺の幻が目の前に現れて邪魔をするため、いつも失敗に終わってしまう。そして、金閣寺を自分の手で焼き払わなければ先に進めないと決意する。金閣寺を自分の手の中に治め、世間に自分の存在を気づかせたいのだ。なんという責任転嫁。あいつさえいなければ、と思って、人殺しするのと同じか。
 太宰治でもそうだったが、結局のところ主体と客体の間で悩むというところは変わらない。認識論や永遠の孤独が出てくる。自分は一生ウソをついて生きていかなければいけない、とか、悪いことをしても証人がいなければよい、とか、自分の存在する理由を探せば人と違うことをしなければいけないが、そうすると人からは理解が得られない、とか。名作が名作だと言われる所以は、扱っている題材が人間の存在を悪と捉えればいいような気がする。読んでいたら、気分が暗くなるよりは、こんなに深く考えたことのない私はまだマシなのかなと思ってしまう。
 滋賀から離れるときに金閣寺やその他寺社仏閣を観光しておいてとてもよかった。この作品を読むときには、先に現物を見ておくことをお薦めする。