びーの独り言

どこいくの?どっか。

伊豆の踊り子

伊豆の踊子 (新潮文庫)

伊豆の踊子 (新潮文庫)

 「雪国」とセットで買った。「雪国」が面白くなくて、あんまり期待してなかった。短編4本を収録している。「伊豆の踊り子」「温泉宿」「抒情歌」「禽獣」。
 「伊豆の踊り子」は川端康成の実体験に基づいている。主人公が14歳の踊り子に興味を持つ。最後の別れのシーンで主人公の頬を涙が流れる。けれど、生きてる喜びのようなものを感じたりもする。そういう感覚はわかる。普通に読んだら面白いだけで、凄さというのは感じない。細かいところでもっと深い意味があるみたいだが、私にはさっぱりわからない。「温泉宿」は温泉宿の女たちの生き様を描いている。なぜか川端文学には、宿が出てきて、そこには必ず女がいる。そういう時代があったこと自体が私には想像がつきにくい。出てくる女は、その場その場をたくましく生きている。「抒情歌」は好きな人が死んでしまって語りかける内容。死生観を扱っている。死ねば人間に生まれ変わるよりは花に生まれ変わりたい、というあたりどことなく厭世感が漂っている。「禽獣」は独身で鳥や犬を飼う男の話。鳥が死ぬ。犬の赤ちゃんが死ぬ。命が他人事のよう。
 「雪国」よりは面白いと思った。ヒントが巧みに転置されてたりするので、何度も前に戻ったりした。2回目を読めばわかるような気がしたが、それでも最後まで何かわからない不気味な部分が残った。後味があまりよくない。わけのわからなさは三島由紀夫に通じるものがある。理解できない部分は理解しない方がいいのかもしれない。