びーの独り言

どこいくの?どっか。

2021/08/26(木)「影響」

 夕方、後輩Hが辞めると言ってきた。昨日、もしかしてと思った矢先のことだった。「辞めるのは残念だけど、決めたことだから、新しい生活を応援してるから」と言った。やはり好き嫌いとは別に同僚が辞めるのは寂しいもんである。「これから慰留されるかもな。こういうのって必ず慰留しなくちゃいけないから。慰留されても辞めますとか言ってたのに、やっぱり辞めるの止めますというのもあったみたいよ」と付け加えた。Hの決心は固いようだった。菱沼さんにも話していた。
 今回の部署閉鎖は直感的に、転勤がイヤなら辞めてもいいよ、という目的に思えた。会社全体から見て研究所は掃き溜めであり、研究所から見てうちの部署は掃き溜めであり、さらに尼崎は掃き溜めだった。当然、成果が上がるわけもない。そんな人たちを他の部署に投入したところで効果はしれてるが、悪代官が「働きの悪い部署を潰して、重点テーマに投入しました」と報告することはできる。多くの装置を廃棄することになっても、人が辞めたら人件費的に充分ペイしそうである。
 今回の閉鎖は、うちの会社に限ったことではなくて、日本全体の状況を反映していると思う。技術が成熟し、投資額は巨大になるのに成果は上がらなくなっている。10年前は「環境に優しいからって消費者は値上げを受け入れない」と言われてたのに、今や10年前に否定されていたテーマが大ブーム。これでは正直ネタがないようにしか見えない。
 この先、研究所では、実現性が厳しいテーマしかないので、どうやってしのぐかに頭を悩ますようになるだろう。やってるふりをしたり、他の人のせいにしたり、黙って目立たないようにしたり。研究所は人がだぶついているから、小指の先ほどのきっかけで退職に追い込まれても不思議ではない。ここから先はなんでもあり。生き残るか否かはもはや運かもしれない。
 転職したところで、日本全体が停滞しているので、余程の特殊技能を持ってない限り、給料が下がり、仕事はきつくなるだろう。
 返り際にHから「辞めるの止めます」と言われて、びっくりした。なんらかの慰留があったのだろうか?人が辞めるのを見るのは気持ちのいいもんじゃないし、良かったのかなと思った。
 うちに帰ったら、Hから電話があった。「やっぱり辞めます」。声も途切れ途切れで明らかに普通じゃない様子だった。「ゆっくりでいい。落ち着け。辞めても辞めなくてもどっちでもいいから、一晩寝てから決めたらどうだ?誰か友達とかに相談してみろ。誰かに話したら落ち着くよ」とアドバイスした。
 急に、変な気を起こすのではないかと心配になって、新部長のとこに電話した。偶然にも今日電話番号を教えてもらったところだった。事の経緯を教えてもらうと、Hはかなり迷っているようだった。辞めたら後戻りできないので保留した方がいいのではないかと思った。まだ少し日があるので、今後を注意深く見守ることになった。