高校友人Iから誘われて梅田で飲んだ。実はもうしゃべりたいことはなかった。むしろこれ以上しゃべると立場の違いだけが強調されてケンカするのではないかと思った。モチベーションを上げるために事前に行ってみたい串カツ屋をピックアップした。
そしてまさかのサイゼリヤ。Iは相変わらず激安居酒屋を勧めてきた挙げ句、飲むのさえイヤがった。｢高校のときにサイゼリヤがあったら入り浸ってたわ｣と言われて、俺ら高校生かと思った。
Iは一方的にしゃべった。ワインを飲まなきゃしんどかった。途中思いきって自分の意見を言ってみたら、｢好きなんだからしょーがないやろ｣と言われて、｢それじゃどういう理由で好きなのかまったくわからない。説明できないなら言わない方がいい｣と言ったら、｢俺が好きだから好きって言ってるだけやん｣、理由もなく好きってことを何度も主張されても、こっちからはそれ以上返しようがないわ。
同じく高校友人のmisterと会いたいという話になったので電話した。声を聞いてすぐに、今一番しゃべりたかったのはmisterだということに気づいた。移植を告げられたときから、抑え込まざるえないやりきれない想いがあった。misterは友人であり専門医、これ以上ない理解者だろう。決して甘えるつもりはないが、その存在を思い出しただけでも心強かった。私の人生はなんという巡り合わせなのだろうか。まるで本当のドラマのように伏線を回収していく。misterとはまた連絡することにした。Iは呼ばない。
Iのお陰でmisterに連絡するという大成果があった。悪気はなくて素直でいい奴だけど、少しはこっちの話も聞けよ。大体のところはわかったし、しばらくいいかなと。
