びーの独り言

どこいくの?どっか。

永遠の0

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)

 「行列のできる法律相談所」を見ているときにこの本が絶賛されていた。特に「最後の100ページが泣ける」とのこと。普段こういう宣伝は信用しないのだが、著者が私の大好きな「探偵ナイトスクープ」の放送作家であり、題材が零戦を扱ってることから買ってみた。
 時代は現代。主人公は弁護士試験を4回落ちてやる気を失っている26歳。姉が駆け出しのフリーライター。祖母の葬式のときに祖父から「本当の祖父は特攻隊で死んだ」と聞かされた。主人公が姉から「戦後60年の記事を書くので、祖父のことを調べて欲しい」と頼まれて話が始まる。
 戦争で生き残った人たちから祖父の様子を聴取する形で話は展開していく。祖父は特攻して死んだから、ラストはわかっている。しかし、どうしてそうなったのかがわからない。聞き取る度に謎が解決していく。
 真珠湾攻撃から終戦までが零戦乗りの視点で描かれている。描写が細かくて臨場感が凄い。零戦のことがよくわかる。実在した伝説のエースが何人も出てきて興味深い。また第二次世界対戦の経過や激戦の様子もよくわかる。よくここまで調べあげたものだと感心。
 何度目頭が熱くなったか!感動する要素がすべて盛り込まれている。今までこんな作品に出会ったことがない。意外な展開の繰り返し。これは心底やられた。こういう作品を読むと、小説の持つ力を再認識させられる。
 私が小学校の頃は反戦教育が盛んで、よく戦争の悲惨な話を聞かされた。高校に入ったあたりから戦争の話を聞くことはなくなった。そして、バブルが起き、完全に時代が変わった。昔、日本の国を守るために命をかけて戦った人たちがいたことは、ほとんど顧みられることはなくなった。
 この本は戦争を強烈に批判している。現場を知らない上層部が人命を軽視した無謀な作戦を組んでたことや、後一歩で勝てたのに恐れをなして逃げてしまった指揮官を糾弾している。また一番の悪は戦争を賛美した新聞社であると言い切っている。
 現代社会でも似たようなものだ。体罰はなくなったかもしれないが、恫喝や陰湿ないじめは残っている。絶対に無理そうなことをやらされ、その責任を取らされたり。そしてマスコミは偏向報道を繰り返す。
 ただ一つ違うことは、今は命までは取られないこと。戦争のときはまさしく逃げ場がなかった。その矛先が自分の組織に向かなかったのはなぜなのか?著者はそれを指摘するが、答えはない。日本人の根深い問題かもしれない。
 すごく読みやすかった。結構分厚い本だが、一気に読めた。すべての日本人にお薦めする。