人生の救い

車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫)

　車谷氏もこないだの岡田氏と同様に朝日新聞のお悩み相談コーナー｢悩みのるつぼ｣の回答者である。車谷氏のことは知らなかったが、後で調べると直木賞をもらっていた。この本は｢LIBRO｣の店頭に並んでいた。｢悩みのるつぼ｣の回答が載っていたので、岡田氏とは違う面白い回答が見れるんじゃないかと買ってみた。
　どんな相談にも同じ回答。「人生は苦行である。あなたに比べれば、私なんてもっと悲惨だ。先天的な蓄膿に悩まされて、鼻で息ができない。しかし、自分は人をうらやましいと思ったり、自分の身を呪ったりはしていない。本当に挫折したときに初めて真の人生が始まる。求めなければ、悩むこともない。阿呆になれ。苦しくなれば、散歩して、草の上でおにぎりを食べて、寝ころがって、空を見ればよい。救われたいなら、自分よりもっと悲惨な人を助ければよい。」
　完全に仏教の世界、悟りを開いている。視点の次元が違いすぎる。それを言っては身もふたもないだろ、という感じ。笑うしかない。考えはまさにその通りだけど、お悩み相談なんだからもっと相手の側に降りてこないと。自己完結してるなら、表に出てきてはいけないよ。大新聞に掲載されたのが奇跡。今は降板してる。本人が飽きたか、打ち切られたか。
　2日で読める。1回で止めた。最後まで読まなくても、強烈な信念を理解することができる。お勧めはしないが、妙にあとをひく。本当に行き詰まったら読んでみてもいいかも。