びーの独り言

どこいくの?どっか。

TPP亡国論

TPP亡国論 (集英社新書)

TPP亡国論 (集英社新書)

 この著者を初めて見たのは2chまとめサイトだった。TPPの記事を見ていると動画が貼られていて、TPP参加にマジギレする人物が映っていた。著者は経産省から京大に出向し准教授を勤めている。なぜTPPに反対しているのか興味があった。同じ年であるのも気になった。
 結論から書く。「TPPは参加国の規模から実質アメリカとのFTAである。アメリカは国内の景気対策のために輸出倍増計画を立てている。アメリカは日本への輸出を増やしたいだけである。TPPでは関税撤廃をうたっているが、日本の関税率は世界的に見ても既に低い。行き過ぎた自由貿易は安い商品が入ってくるのでさらにデフレを進行させる。また関税撤廃よりも為替変動の影響の方がよほど大きい。日本はアジアの需要を取り込みたいとしているが、GDPに占める輸出額は2割しかない。輸出で勝負するなら人件費を低く抑えなければならないが、これもデフレを進行させる。輸入を増やしても輸出を増やしてもデフレになる。デフレを解決するには内需を拡大するしかない。お金を使えるのは国だけである。どんどん公共投資をすべきである。また安い農産物がアメリカから入ってくると日本の農業が壊滅する。農産物は石油と同じ戦略物資であり、世界的な天候不順などで農産物の輸入が止まると大変なことになる。アメリカは日本への支配を強めたいのである。日本は安全保障をアメリカに頼ってきたが、いつまでもアメリカが守ってくれるとは限らない。日本はいつも争いを避けてきた。国として独立を保ちたいなら自立しなければいけない。」
 実は大枠では目新しいことは言ってない。不況のときに公共投資を増やすというのは有名なケインズの主張。内需拡大ができないからみんな困っている。金をどこに公共投資をするべきかもきちんと示して欲しかった。そもそも金は景気拡大で使うものではないと思うが?また日本が環境立国を目指すなら消費は悪でしょう。消費を増やして温室効果ガスを減らす方法は?それから為替をどうやって操作するのよ。いくら手を打っても為替でおしまいになるんでしょ?それが自然の成り行きなんだから無理ゲーじゃん。ずっと右肩上がりを期待する経済の仕組み自体がねずみ講でしょう。TPPに反対はいいけど、国として独立という話しは核兵器を持てとでも?今は独立してないのか?
 民主党はTPPへの参加検討のため関係国と協議すると言ったが、交渉のテーブルにも乗せられてないわけで。アメリカの狙いが日本への輸出を増やすことなら喜んで話し合いに応じると思うが。またはアメリカに配慮してリップサービスしただけで、本当は最初から参加するつもりがないのでは。経団連に気を使いつつ農家も見捨てずみたいな。製造業は勝手に海外に出ていくのが自然でしょ。
 池上さんは保護主義は産業を衰退させてきたと主張し、農業がたいへんになってもTPPに参加すべきと言っている。でも、中野氏の方が細かいところまで考えているように思う。正直こういう経済や政策の話はきりがないし何も産み出さない。こういう議論が日本を強くするのだろうか?インテリがインテリのための議論をしてるだけじゃないか?ほんとのところは全体を豊かにするより、自分だけ抜けることだろ?
 3回読んだ。この本は非常に示唆に富んでおり刺激的で面白かった。いろんな要素が複雑に絡んでいるところを一つ一つ解きほぐしながら、抜けのないようにあらゆる角度から検証している。どこかの偉い経済学者がこう言ってるという引用を根拠にするのは騙されている感じがしなくはないが、大枠のところでは正しいのかなと思えた。まるで推理小説を読んでるみたいだった。もう一冊買ってあるのでとても楽しみだ。