びーの独り言

どこいくの?どっか。

日本と世界の「流れ」を読む経済学

日本と世界の「流れ」を読む経済学 (PHPビジネス新書)

日本と世界の「流れ」を読む経済学 (PHPビジネス新書)

 伊藤氏のことは2009年の5月8日にM会の講演で初めて知った。経済学の本すら読んでなかった時期だったから、結構インパクトがあったことを覚えている。数字がスラスラ出てきてわかりやすかったし、そういうこと言うの、というくらい踏み込んだ内容に聞こえた。そのときの内容は「景気をよくしなければいけないが、日本国内には需要がない。みんな貯金ばかりしてお金を使わない。相続税を廃止するくらいしかないです」というものだった。後日大学友人Sに聞くと、東大の「ダブル伊藤」として有名ということだった。この本は出たばかりでたまたま本屋に平積みされていた。TPPのことも書いてそうだったので中野氏に偏るのもアレだし買ってみた。
 驚いた。中野氏の徹底的に細かいところまで踏み込んだ内容に対して、あまりにも中身のない文章。何も得るものがないどころか気分が悪くなった。思わず途中で読むのを止めようかと思ったくらい(それでも2回読んだが)。後でネットで調べたら、伊藤氏はTPP推進の筆頭のようだった。伊藤氏は中野氏のことなんて知らないのかもしれないけど、「開国」だと煽ってるだけじゃ中野氏が批判してた新自由主義者そのまま。「国を分けて議論するのはいいことですけど」って言ってるのがまるで他人事のよう。3年前に「政治家は自分の利益になることしか考えてませんからね」と言っていたが、この人も自分の保身だけしか考えてなさそう。気持ち悪いくらい新聞の論調と同じ。民主党から金をもらっている御用学者じゃないか?
 この人の考えをもっとも表している文章を次に挙げてみる。「私自身はTPP交渉に参加すべきだし、一刻も早く消費税の引き上げをすべきだと考えている。TPP参加や当面の消費税率切り上げで日本が抱えている問題が解決されるということではない。しかし、日本社会を開放してグローバル経済の中での日本の進むべき道を確保しておくことが、日本経済が活力を持つ唯一の方法である。また、高齢化社会の中で持続性のある財政制度や社会保障政策を確立することなく、日本の将来はないと考えている。」、中野氏の本を読んでるとこの文章のどこがダメかよくわかるし、それ以前に日本語としておかしい。「TPP参加や消費税切り上げをしろ」とはっきり言っておきながら、「問題が解決されるわけではない」とはずれたときの予防線を張ってる、というか自信なさげだ。それなのに「他にできることはないじゃないか、やらないよりやったほうがマシじゃないか」という程度で「唯一の方法」だとか「将来はない」とセンセーショナルに煽っている。さすが「開国」とかわかるようなわからないこと言ってるだけある。他には、「電気料金の均一料金を見直せ」「格安航空会社はもっと普及すべし」「兼業農家への補助禁止」など、とにかく規制撤廃で市場原理に任せましょう、自然にやってるのがいいよねみたいな。そのくせ広がる格差はなんとかしなきゃいけないねと軽く触れただけ。実体経済との乖離は無視かよ?ケインズ政策にも一切言及なし。
 どうもこの人の物のいいようは鼻につく。文章はうまいけど、言葉の中でウソが含まれているような気がしてならない。3年前にはすでに「相続税廃止くらいしかない」って言っていた。この人は最初からすべてがダメだと思ってるようにしか見えない。そのさじ加減一つで生存権にかかわる人がいるのにどれだけ発言が重いのか考えてないのかな。安全な場所から適当なこと言わないで、責任をもって意見してくださいね。経済学者は何も生み出さない。宗教の教祖と同じただの詐欺師。経済自体が巨大なねずみ講、すべて幻想。実体の伴わない理屈なんて何の役にも立たない。