びーの独り言

どこいくの?どっか。

終着駅へ行ってきます

終着駅へ行ってきます (河出文庫)

終着駅へ行ってきます (河出文庫)

 毎度お馴染み宮脇氏の本。こないだ見つけた3冊のうちの2冊目。軽い本が読みたいときにちょうどいい。
 全国の終着駅を回る企画である。自分が行ったことがある駅に対しては、にやにやしたり、懐かしかったり、別の視点になるほどと思ったり。既に廃止されてる駅に関しては貴重な情報だ。
 特に士幌線十勝三股駅のくだりにはかなり驚いた。私が小学校の頃の「国鉄駅名全百科」では、既に糠平と十勝三股の間はバス代行になっており十勝三股には三股山荘の1軒しか人が住んでいないと書かれていた。2年前の夏、私は十勝三股駅の跡を訪れてまだ三股山荘があることに感激した。食事をしながらおばさんといろいろ会話をした。実は三股山荘のおじさんがバスを運転していたのだが、そのことはネット情報で知っていた。この本には「国鉄駅名全百科」よりもう少し古い時期の話が書かれていた。さらにもう1世帯が住んでいた頃の話で、宮脇氏はバスに乗って運転手さんと会話したりもう1世帯の人と会話したりしていた。このエピソードはネットでは見たことはなかった。どうしてここまで惹かれたのかわからないけど、まるでお宝を見つけたように食いついてしまった。遠い昔にとんでもない山奥に人の営みがあって、メインの収入であった木材が採れなくなってから徐々に集落が寂れ、再び静かな山に戻る様子に、時間の流れを感じせつなくならざるをえなかった。
 宮脇氏の紀行文は名文である。落ち着いていて冷静でありながら、旅で出会った人々の暮らしや歴史への深い思いが行間から滲み出ている。くどすぎずユーモア、技巧的ではなく素朴。洗練されておりバランスがよい。そして、私も全国を旅してただけに、情景がオーバーラップしたり、昔の在りし日の姿に思いを馳せたりする。何冊読んでも変わらないクオリティ。いつまでも飽きることもない。