- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/01
- メディア: 文庫
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太宰治の第2弾。超有名な作品。その衝撃的な題名がずっと気になっていた。でも、絶対に暗い内容だと思ったし、難解すぎてわからないのはないかと。ようやく年齢的にも大丈夫そうな気がした。新しい発見があることを期待。
他人に合わせるがゆえに他人をあざむいているような感覚に苦しみ、逆に他人から受ける印象もただあざむかれているだけで本当の他人の姿ではないかという不信。よって永遠に人とはわかりあえないという孤独。もがけばもがくほど堕ちていく。最後には精神病院に入れられ、人間失格の烙印を押されてしまう。
最後の有名な一節、著者の主張したいことはここに集約されている。「いまは自分には、幸福も不幸もありません。/ただ一さいは過ぎて行きます。/自分がいままで阿鼻叫喚で生きて来た所謂「人間」の世界に於いて、たった一つ、真理らしく思われたのは。それだけでした。/ただ、一さいは過ぎて行きます。/自分はことし、二十七になります。白髪がめっきりふえたので、たいていの人から四十以上に見られます。」
巻末の解説によれば、著者は二十一歳で自殺未遂をし、二十九歳で個人としては死に、作家としてのみ生きることを決意した。パーソナルな自分と社会的な自分が分離してしまったのだ。告白にも近いこの作品を最後に三十九歳で著者は自殺してしまう。
人間の持つ問題について思い悩む様が描かれている。それゆえに人を引き付けるのだろう。全体的に共感を覚えた。ああ、こんな考えをする人がいたんだと。著者は正しいと思う。でも、弱すぎた、繊細すぎた、正直すぎた。環境に恵まれていたのに贅沢すぎる悩みだ。辛くも悲しいのは認めよう。だからこそ、そういうのはグッと飲み込んで生きなきゃダメじゃないか。
30代以上の人にお薦め。免疫がないと止めた方がいいかもしれない。知らなくていいこともある。