びーの独り言

どこいくの?どっか。

脳と魂

脳と魂

脳と魂

 「バカの壁」の作者であり解剖学者の養老猛司と、芥川賞作家で僧侶の玄侑宗久の対談集。対談集という性格上、内容にまとまりがない。それに扱ってる題材が題材だけに結論もない。ただ、洞察力の鋭さに感心する場面が多い。内容を箇条書きにすると、
①日本には「公私」は存在するが、「個」は存在しない。「公私」には世間が絡んでいて、「個」は世間と無関係。昔から日本にはプライバシーという概念がなかった。その証拠にプライバシーに該当する日本語がない。
②日本のシステムは西洋と違い、循環を基本としている。輪廻とかがそう。江戸時代がうまくいっていた。近年の西洋文化流入で、日本はおかしくなっている。
量子力学における粒子であり波動であることは、一見気持ち悪いが、脳の認識の問題であり、なんら不思議でないということ。
④魂が存在するかどうかわからないが、物質が織り成すシステムである。物質論では説明不能。決して魂があると認めなかった点が面白い。
⑤日本のシステムは、脳の認識と一致する。すなわち、正しくもなくて正しい。すなわちどっちとも取れるってこと。
⑥科学は経験的。判断する人は主観で物を見ている。絶対的客観は存在しない。
 ひたすら西洋と比較して日本を絶賛していたような印象。要は、仏教文化の肯定である。最後の方ではカオスという言葉が頻出してた。答えがないのが答えなら、この辺りのこちょこちょした話を読んでもキリがないと思う。それと、抽象的な話が多くて理解しづらいから、無理に勧めるつもりはない。ただ、仏教の思想に興味があればどうぞというところ。