びーの独り言

どこいくの?どっか。

観音ガールと巡る滋賀近江の十一面観音

 この本を買ったのは京都大丸の本屋。地域クーポンを使える場所を探していて偶然に見つけた。かねてより湖北の観音信仰に興味があり、こんな本が出ていることが驚きだった。即買いだった。
 湖北には地域に根差した独特の観音信仰と仏像文化が見られる。長浜市は「観音の里」と銘打って、観光PRしている。
 私と湖北の出会いは、2005年に大学友人Sに連れられて渡岸寺の十一面観音立像を見に行ったことから始まる。当時、私は宗教に否定的であったが、大学友人Sは国宝巡りを趣味にしていて、渡岸寺の十一面観音立像は国宝指定されていた。私はせっかく滋賀まで遊びに来てくれたのだから大学友人Sに一日付き合うことにした。これは初めての仏像との出会いでもあった。
 渡岸寺の十一面観音立像には、織田信長の焼き討ちに遭いかけたが、村の人たちが土に埋めて守ったという逸話があった。後々知るのだが、滋賀の寺では必ず織田信長のエピソードが出てきて、どうやって戦火を逃れたかが語られる。十一面観音立像は仏像の見方もわからない私でも美しいと思った。細身で優美であり、バランスがよかった。そして、お顔が柔和であり眼差しは慈愛に満ちていた。確かに尊くてありがたい存在に見えた。
 大学友人とは別の寺にも行った。そこは地元の人にお堂の鍵を開けてもらうスタイルだった。地元の人が大切に信仰を守っていることが伺いしれた。
 その日以来、私は徐々に寺に興味を持つようになった。滋賀に住んでた時に奈良と京都の有名寺院を回ったけど、湖北のような人々の信仰を感じるところはなかった。滋賀の仏像が語られることはほとんどないが、本当の仏像好きは滋賀を抑えなければいけないだろうと思ってる。またみうらじゅんも湖北の仏像は独特と言っていて、ますます興味が出てきた。
 さて、この本では東京から長浜に移住した若い女性が、湖北の信仰文化を中心に寺と仏像を紹介している。話に彩りを加えるのが、井上靖「星と祭」である。この小説の中には湖北の寺と仏像がたくさん出てくるらしい。その順番に従って、寺や仏像が紹介されていった。
 最初はいきなり渡岸寺の十一面観音立像だった。読むのがしんどいくらいの仏像の詳しい描写は、仏像の基礎知識がなければ、ちんぷんかんぷんだろう。加えて写真がなかった。仏像の紹介で写真がないのは初めてかも?ましてやトップバッターを飾る国宝。魅力を伝えなければどうする?後で紹介される寺ではふんだんに写真が使われていただけに残念だった。ネットで画像検索しながら読み進めるのがいい。
 私にはたいへん面白くて楽しめたのだが、コンセプトがマニアック過ぎるんだよな。読みやすい文章ではあるが、ある程度、奈良や京都で仏像を見てきており、なおかつ湖北の位置付けがわかっている人でないと、楽しめないのではないか?または地元の人とか。この本を読んだとして、地元の人に電話してお堂の鍵を開けてもらうのはハードルが高いだろう。まずは渡岸寺から高月観音の里歴史民俗資料館に行くことをお薦めします。そこで大体の情報は手に入る。それから日を改めて、計画的にお堂を回ったらいいかと。