- 作者: 安部公房
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/05
- メディア: 文庫
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稲毛海岸イオンの「未来屋書店」の店頭で見かけた。安部公房氏は一度読んでみたかった。大丈夫かなと少し心配だったが、最初の方を読んでみて読めそうだから購入してみた。
題名そのままに、世間から離れて段ボール箱を被って路上で生活する男の話である。箱の中に潜ることにより世間との繋がりを絶ち、客観的に世間を見つめている。だからと言って、孤独や死とか絶望とか自分を深く掘り下げてる感じではない。あまり深刻じゃなく、どこかユーモアすら漂っている。わけのわからない不条理劇。
細かい描写や言い回しは天才だと思う。きちんとした文章や繋がりにはなっていないが、なんとなく行間や雰囲気でわかる。なにがなんだかわからなくなることも多々あるが、文学作品ぽい香りだけはぷんぷん。
それにしても何をもって文学作品と言うのだろう?哲学では表現できない自分ワールドを描いて見せることだろうか?深淵で難解で曖昧な文章で、それぞれの解釈を引き出せばいいのだろうか?構成の素晴らしさや細かい言い回しのテクニックの斬新さを競っているのだろうか?いずれにせよ私にはポストモダンに通じる胡散臭さを感じるわけだ。
私は正確さやわかりやすさを犠牲にしたような他人の文章など必要としていない。ましてやそれぞれが自由に感じて欲しいという態度があるとするなら傲慢であると感じる。私には目の前にある現実に思いを馳せるだけで精一杯である。勉強になるとか、いい気分になるとか、得るものがなければ読む意味はないも同然だ。この本には時間に見合うだけのパフォーマンスはついに感じなかった。
1回読んだ。3日かかった。かなり気合いを入れて一気に読まないとすぐ迷子になる。何回も読めば、細部にわたる理解が深まるだろうが、他人の自己満足につきあってる時間はない。今回、私には文学作品は合わないと確信した。私は私が理解できない本をお薦めするわけにはいかない。