びーの独り言

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オタクの息子に悩んでいます

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

 オタキング岡田氏の第三弾。偶然に「LIBRO」の店頭で見かけた。題名の「オタク」云々は、狙いすぎだと思ったが、副題の「朝日新聞「悩みのるつぼ」より」に目が止まった。私はツイッターで岡田氏がお悩み相談をしていることを知っていた。岡田氏の回答文は、一歩深くて心に響くのだ。もしかすると、今直面している遠洋漁業の苦痛が少しでも和らぐのではないかと期待。3回読んだ。
 岡田氏が相談文にどのように向き合い、どのように回答文を作成しているかがいろいろ角度から描かれている。重要なポイントは、相手と同じ立場に立つこと。相談文がどうであろうと自分独りだけは相手の味方であること。相手が自分の大切な人が悩んでいると思って考えること。相手の悩みを完全に解決するのではなく、苦痛を少しでも軽減すること。相手の悩みは相手だけの悩みではなく、新聞読者にも語りかけるようにすること。
 上記基本を踏襲した上で、岡田氏は11の思考ツールを使いこなしている。これらは岡田氏が自分で考え、自然にたどりついた境地である。11の思考ツールとは、分析、仕分け、潜行、アナロジー、メーター、ピラミッド、四分類、三価値、思考フレームの拡大、共感と立場、フォーカス。
 「分析」は依頼者の文章を一字一句徹底的に読み込むことである。
 「仕分け」は、問題を解きほぐし、解決可能な問題か、今解決すべき問題か、などに分類する。
 「フォーカス」は問題を絞ることである。
 「潜行」は深く深く考えて、真の問題にたどりつこうとする。
 「共感と立場」は、上から目線ではなく、相手の立場に立って考える。
 「アナロジー」は例え話である。複雑な問題をわかりやすくするには有効な手段である。
 「メーター」は悩みの数値化。数値化することにより悩みを客観視することができる。また100点を目指すのは無理でも、今より1点は上げれるでしょ、という考え方が可能。
 「ピラミッド」は、人類、性別、年齢、国などに共通の悩みなのかをカテゴリーで分類する。悩みの大きさを測ることができる。
 「四分類」は物事を2軸の対立軸で成り立っているとみなし、さらにそれを2×2のマトリックスで考える。例えば、正直で強気、正直で弱気、嘘つきで強気、嘘つきで弱気、の4パターンでこれから起こりうるメリットとデメリットを書き出し、行動に反映させる。
 「三価値」は、相反する集団の利益と個人の利益の関係に、美徳という3つ目の軸を与えて考えるやり方。こないだ話題となったサンデル教授の得意とするところで、ヨーロッパでは当たり前の考え方らしい。
 「思考フレームの拡大」とは、視点を変えること。例えば、サラリーマンの立場では会社の命令は絶対だが、個人として考えれば法律で基本的人権が保障されており、会社命令だからといって法律に違反する命令を聞く必要はない。
 岡田氏の文章には主題とは別に時折いい言葉が散見される。「幸福に生きるのに必要なのは真実ではなく、「信じたいウソ」です。信じたいウソ、つまり「夢や希望」が見られなくなった時、僕たちは生きる気力までなくしてしまうんですよね、」「実はこの演技性というのを否定すると、人間関係って成立しない。恋愛というのは、基本的に「無意識化された演劇」だと思います。だから僕らは、恋愛の時には「いかにも恋愛らしい」ことをやろうとするんです。」「幸せとは「不幸の回避」ではなく、「乗り越えるのが楽しい不幸」だと思います」「中二は、生物的に体はほぼ大人なのに社会的には一人前ではない。まだまだ役に立ちません。だから大人たちは、あなたたちを一ヶ所に閉じ込めて、社会の邪魔にならないようにしています。勉強だの、集団生活を学ぶだの、言葉は取り繕っても、働く親のため幼児を預かる保育所と同じ。きつい言い方をすれば、中学校は時間で区切られた牢獄です。」
 今までいろんな本を読んだけど、岡田氏には妙にひきつけられる。発想豊かで、それを裏付ける理屈。この本には取り上げられてないが、他の要素として「サプライズ」「センセーショナル」「オリジナリティ」が挙げられるだろう。最後には必ずオチがついている。一歩上の発想で「どうだ」とどや顔されてるみたい。騙されてるような気もしないではないが、受け取る側がしっかりすればいい問題だ。
 本を読んで理解するということは実践することである。今自分が悩んでいる部分を考えてみると、遠洋漁業よりダイエットが深刻であった。いつまでも痩せたり太ったりを繰り返している。「太る努力を毎日していたんだ」と岡田氏は転換しているが、そういう発想は無理。私は私なりに覚悟を決めないとなあ。