びーの独り言

どこいくの?どっか。

遺言

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 ツイッターを始めた頃、著者の岡田斗司夫氏をフォローしてすぐに「島本和彦さんがツイッターを始めた」とつぶやいたら、その直後に岡田氏が島本氏をフォローしていて、ちょっと嬉しかったのを覚えている。ツイートの中で岡田氏は、「オタキングex」に移行するために、岡田斗司夫の本としては「遺言」が最後で、今までの活動をまとめた内容にする、ということだった。「八重洲ブックセンター」に買いに行くと、出たばっかりだというのに本棚の目立たないところに収まっていた。それもそのはず、この本はとても分厚くて、それでいて小さなフォントで上下2段で書かれていた。持ち運びに不便なので通勤電車で読もうとは微塵も思わなかった。そうこうしているうちに3年が経過した。この本を思い出したきっかけは、ネカフェに泊まっているときに島本氏の漫画「アオイホノオ」を読んだときだった。「アオイホノオ」の内容は島本氏の学生時代を描いていて、なんとそこには岡田氏が出てくるではないか!他にも「ガイナックス」の庵野英明氏と赤井孝美氏も。不思議なことにレコダイのおかげで部屋での読書の時間を持つことができた。機は熟したということか?
 この本では、岡田氏がDAICON FILMを成功させ、「ガイナックス」を立ち上げて、映画「オネアミスの翼」、OVAトップをねらえ」、パソゲー「電脳学園シリーズ」「サイレントメビウス」「プリンセスメーカー」、NHKの連続アニメ「不思議の海のナディア」を経て、退社するまでが描かれている。この中で私が知らなかったのはDAICON FILMのエピソードだけであり、他はリアルタイムに体験してきた。因みにDAICONとは大阪で開かれた全国規模のSF大会のことであり、岡田氏たちは当時としては画期的な3分間のアニメーションを作っている。この下りは「アオイホノオ」で描かれていた。
 「オネアミスの翼」については、当時私は中学生で「アニメディア」という雑誌を買い始めた頃にとても話題になっていた。そして、今に至るまで作品を見たことはなく、また前評判の高さとはうらはらに実際の感想はかんばしくなかったという印象を持っている。その後高校で出会ったtamayanが「リイクニ(ヒロイン)はただの変人だった」と語っていたのを覚えている。「トップをねらえ」「電脳学園シリーズ」では、なぜかwaaaan、kip、tamayanが「ガイナックスだから」とやけに騒いでいたのが印象的だった。私は彼らが騒いでいたから「ガイナックス」を意識しだしたのであり、「ガイナックス」がなんだったのかというのはこの本を読むまでよくわかっていなかった。「プリンセスメーカー」はとてもはまったゲームだった。世界観やゲームシステムが秀逸だった。このとき強烈に赤井孝美氏の名前がインプットされた。「不思議の海のナディア」は、湾岸戦争のときにちょうどやっていた。「ガイナックス」がなぜNHKに入り込めたのか不思議でしょうがなかった。ここでもwaaaan、kip、tamayanはやたらと騒いでいた。庵野秀明氏のことを意識したのはこの頃だった。後に「エヴァンゲリオン」の監督としてブレイクする。
 岡田氏のスタンスは、自分の作りたいものを作る、であるように思う。また、ストーリーの論理構成を重視してるようにも見え、例えば伏線を張ったら必ず回収する感じである。これに対して、「不思議の海のナディア」での庵野氏は、辻褄が合わなくてもキャラを生かしてハッピーエンドにする。「エヴァンゲリオン」でもそんな感じだった。岡田氏のスタンスでは、お客様が喜ぶものを提供する、という感じではなく、一般受けは難しいように思う。突き詰めれば、自分の好きなものを表現することしかできない、ということであるが、視聴者とのギャップを埋める努力も多少はいるのかなと思うわけで。今の、いろんなことを本に書いてそれに賛同者がついていく、というスタイルが合ってるのだろう。
 5日で読んだ。分厚さをまったく感じないくらいめちゃくちゃ面白かった。ネタばれになるから書かなかったけど、この本を読むことで今まで抱いていた疑問が次々と解決した。「ガイナックス」を知りたい人に超お薦めです。