進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)
- 作者: 池谷裕二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/01/19
- メディア: 新書
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私にもっとも影響を与えている池谷先生のブルーバックス。私は最初の方の著作には面白いものが多いと思っている。だからこの本をずっと楽しみにとっていた。
この本は池谷先生がアメリカ留学してたときに、日本人学校の高校生相手に講義した内容がベースになっている。本文は対話形式で書かれていてわかりやすい。池谷先生によれば、高校生に伝えられなければ理解してることにならない、ということである。この精神は後の著作の大きな特徴となっている。
他の著作と大きく異なるのは、意識という問題に切り込んでることだ。意識がどういうメカニズムで生まれるかは最大の関心事でありながら、未だによくわかっていない。そこに敢えて踏み込んでいくことこそ若さがなせるわざであろう。池谷先生は、意識が生まれる条件として、表現を選択できることを挙げている。そのためには言葉を持っていることが重要であり、言葉がなければ、抽象的な思考が生まれないとのこと。意識の発端がどうやって生まれるかは、後の著作と同じように、脳が活動してから意識がわきあがる、という立場を取っている。では、なぜ脳が活動するのかについては触れていなかったが、一つには本能に刷り込まれているか、またはシナプスのランダムな発火との関係を示唆している。
いつもどおり知性が溢れる内容に、さらに若さと勢いが加わり、狙いどおりシリーズ最高の出来だった。私はどこから来て、なぜそうしたいのか?そんな根源的な疑問にも答えが出せそうだった。我々の世界を魅せてるのは脳であり、もしかすると現実は自分が思っている以上に脳内補正されていて、ほとんどが幻なのかもしれない。3回読んだ。もっと読んで暗記したかった。改めて後の著作を読み直したくなった。