びーの独り言

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国力とは何か

国力とは何か―経済ナショナリズムの理論と政策 (講談社現代新書)

国力とは何か―経済ナショナリズムの理論と政策 (講談社現代新書)

 「TPP亡国論」が示唆に富んだ内容だったので買ってみた。中野氏は経済ナショナリズムが専門である。本書は題名からして期待できた。なお本書は先にレビューした「日本を追い込む5つの罠」と同時に読んだ。本書を読んで3回目の途中でワクワクしてない自分に気づいた。だから途中で打ちきって紹介することにした。
 経済学では比較優位論に基づき、貿易により世界は互恵的な関係を築けるとされている。だから国内産業を保護するための規制や関税は撤廃されるべきだという立場を取っている。これが新自由主義であり、アメリカに感化された小泉首相構造改革を進めた。しかし、新自由主義は実際には貧富の格差を広げただけだった。金融自由化がマネーゲームを生み出し実体経済との解離を引き起こした。投資家は金儲けのためなら他国の経済を支配し、文化を破壊した。これらに対抗するのが経済ナショナリズムである。経済ナショナリズムとは自国に有利になるように経済政策を持っていくことである。これは新自由主義に対する保護主義のように見えるがそうではなく、自国が優位になるのであれば新自由主義の立場も取ることができる。
 ナショナリズムとは国民(ナショナル)に基づく。国(ステイト)とは違う。国は法律で国民を束ねるものにすぎないのに対して、国民は共通の言語、文化、慣習などで結び付き、その共同体に自分が属していると自分が思うことが重要である。国力には国民を支配する力と物事を成し遂げることのできる能力の2つが挙げられる。これらを支え強力に推進していくのがナショナリズムである。国力が弱い国家は国民がいくつも分裂している。こういう国は何かをなそうにも思いきったことができない。ケインズ政策ナショナリズムの一つの発現である。
 では日本はどうすべきか。これは「TPP亡国論」と同じである。行き過ぎた新自由主義アメリカの支配を強め日本の農業や文化を破壊するものである。国家として真の独立を果たさなければいけない。
 最初ふむふむと思いながら興味深く読んでいた。国民と国の下りは面白かった。ただ文章がくどくて3回読むには耐えられなかったし、よく考えればこんなん当たり前だろうとさえ思うようにもなっていた。ちょっとこういう主義主張には飽きてきてるかもしれない。でも、中野氏の著書はさらに3冊買いたしてたりするんだよなあ。