びーの独り言

どこいくの?どっか。

はじめての構造主義

はじめての構造主義 (講談社現代新書)

はじめての構造主義 (講談社現代新書)

 橋爪先生の2冊目。大学友人Sのお勧め。昔に勧められた本で理解できなかったことがあるから、少し不安であった。
 物凄い面白かった。読者に語りかけるようなユーモアな文章。難しい内容をわかりやすく説明する技術。そして、取り上げた内容の素晴らしさ。サイモン・シンのような切れ味だった。3日くらいで読める。1度読めば十分だと思ったけど、大事なことだから3回読んでみた。
 そもそも構造主義という言葉自体が聞き覚えがなかった。そこに登場したのがレヴィ=ストロース。この名前は大学の般教で聞いたことがあった。インセストタブーという用語も聞いたことがあった。インセストタブーとは近親相姦の禁忌という意味である。世界各地にはいろんな部族があるが、部族により結婚してはいけない親戚が異なっているらしい。例えば、父方と母方のいとこが複数いる場合、日本ではどのいとことも結婚できるが、原住民の中には結婚してもいいいとこと、結婚してはいけないいとこがあるケースが多い。このことはずっと説明がつかない謎だった。レヴィ=ストロースはこれを次のように説明した。女性は集団にとって貴重な贈り物である。集団は女性を他の集団に送る代わりに、他の集団から女性をうけとる。贈り物は大切にしなければいけないから、集団が自分の集団の女性と関係を持つことは禁止される。これがインセストタブーであると。なんという解釈か。つか、なんという学問なのか!
 で、構造とは何かということだが、現象の奥底に流れる基本法則と私は理解している。橋爪先生は数学の定理を例示している。数学はある定理、すなわち構造を基本として成り立っている。そして、さらに続く。構造は人為的に作られたルールだと!ドーン、と衝撃が走った。私はそれを意識したことはなかった。うっすらと、言葉は一義的に決まるから曖昧表現は難しい、と思ってたにすぎない。ここにきて、主客が決して交わらないことが明確になった。
 だが待てよと。日本は元から個人という考えは薄い。私的なものを卑しいとする考えがあった。構造主義は主観を捨て、客観を認めようとする立場である。それは、言われなくたって、なんとなく実践してるような。なんか構造主義だのなんだの言ったって、暗黙知を記述するだけの知的ゲームにすぎないのではないか?また構造主義、それすらもたくさんの案のうちの一つでしかない。私は構造主義を越えた、個人の幸せが究極の目的ではないかと思う。「知らぬが仏」とはよく言ったものだ。知らなくて幸せなら、それでいいじゃないか。そして、人は優しい嘘をつくんだよ。
 なんの話しかわからなくなったが、構造主義は面白いけど、解釈の問題だけで結局何を生み出してるかな、と思う。物事の基本構造を知ればいろいろと便利かもしれない。例えば、ちょっとしたことでもてない男がもてるようになるかもしれない。髪型を変えてみるとか、コンタクトにするとか、発言を変えてみるとか。けど、これを戦略としてみれば、自分の手の内を悟られるのはマズイだろう。構造は時間とともに変わるもんだから、その時の構造だけにこだわっていてはは明日の敗者かもしれない。とにかく、ウィトゲンくんの言うように現実に起きてることが全てである。構造は意識しなくても現実があればそこに内在するに決まっている。マクロスデカルチャーなんてのも文化がないなんてことはない。文化は構造みたいなもんだからだ。
 すみません。表現力が足りませんw。ご興味のある方は直接聞いて下さい・・・。この本はとても面白い。少なくとも技術偏重主義の私にはカルチャーショックだった。長年もやもやしてたものがすっきりと整理されたようだった。橋爪先生の表現力も凄い。一字一句を完璧に操っている。見事な構成力である。Sが勧めてくれた橋爪先生のもう一冊も読んでみよう。