びーの独り言

どこいくの?どっか。

労働者の味方マルクス

 

 マルクスってなんだろうという疑問はずっと昔からあった。橋爪先生なら優しく教えてくれるんじゃないかと。昨年に出た本、4回読んだ。平易な言葉で綴られているが、バックボーンがないとわかりにくいかもしれない。なぜマルクス主義が出てきたのかから始まり、マルクス主義の中身について詳しく解説されている。社会主義共産主義の違いもよくわかった。
 面白く感じたのはマルクスの予言だった。資本主義が進化するにつれて格差がなくなり国内で需要をまかなえなくなり、市場を求めて海外との帝国主義戦争が起こる。やがて外国との格差もなくなっていき、資本家の支配が終わり世界同時革命によりプロレタリアが実権を握る社会が実現される。共産主義は90年代に崩壊したが、今日本が直面している問題は資本主義の終焉と近いのかもしれない。働いて働いて円が高くなって人件費が高騰し、同じ作業をしているのに雇用では賃金の差ができ、労働者の賃金はぎりぎりまで抑制される方向に動いている。それでもどうしようもなくなって製造業は海外に脱出を始めている。あれだけ隆盛を極めた携帯電話も海外勢の価格攻勢にはなすすべがない状況まで追い込まれている。日経新聞地震以降海外進出の話でもちきりだ。この状況はマルクスの言うところの帝国主義戦争と似ている。おそらく海外に行ったら経済支配を強め、植民地支配と変わらなくなるだろう。すると不満がたまって戦争が起きるかもしれない。
 また日本共産党がなぜできたのかのくだりも面白かった。ソ連共産党が大本にあってその日本支部日本共産党、中国支部だと中国共産党になる。日本共産党世界同時革命を目指しソ連共産党の指示のもと活動していた。なるほど、だからかつて治安維持法があったり、今でも外患罪破防法があったりするのか。日本共産党はおとなしい路線に移行して、それに不満を抱く人たちで作られたのが新左翼安保闘争の複雑な組織関係も解説されており、なんとなくわかったような気になった。そんなこんなも日本が豊かになって下火になってしまった。そういうことを気にしなくていいということは幸せなことかもしれない。
 昔は危険思想を持つだけで死刑になった国があった。戦中の日本では戦争反対について語ることはできなかったし、ソ連では粛清された。結局、なんとか主義とかいいながら階級を消すことはできないのではないか。こういう話には終わりがないと思う。理想と現実のギャップというのは決して数式では埋めることができないと思う。自分が貧乏でも他の人を助けようと身を投げ出すだろうか?そこをそんなに深く考えるよりはもっと自分の用事を片付けた方がいいんじゃないかな。