びーの独り言

どこいくの?どっか。

人生に生きる価値はない

人生に生きる価値はない (新潮文庫)

人生に生きる価値はない (新潮文庫)

 いつもの三ノ宮で買った。三ノ宮の待ち合わせのときに何か買うのが習慣になっている。自分の読みたい本だけじゃなくて、ランダムな要素を加えることで読書の幅も広がるというものだ。この本は何の前評判も聞いたことがなかった。平積みされてて、題名がどうしようもないのが私のツボにはまった。3回読んだ。
 著者は哲学の元大学教授。この世界では有名な人らしく「戦う哲学者」と言われているらしい。読んでみると偏屈というかなんというか。人生には価値がないことを認め、そこから明るく頑張りましょう、というのがコンセプト。明るいニヒリズムというらしい。著者は半分人生を降りた、という表現を使っているが、半分というのがミソのような気がする。全部降りたら死ぬしかないからねえ。著者は人生に意味を見出して生きるのは気晴らしだと言い切ってるのだが、では著者の生きる原動力はなんだろうかと思うが、きちんと説明されていなかったり。
 著者は、私のジレンマに対する回答めいたものを示しており、溜飲が下がったような気がするが、ただ過激でセンセーショナルに書いてるだけで、大きな自己矛盾は何も解決されてない。目を瞑ったら何もなくなってしまう状態とそれでも世界は回っている状態の二つの世界の中で、生きているってなんだろうってのをいくら考えたところで論理的な答えは見つかりはしない。そこに必然性や意味を求めたりそんなにつきつめて考えなくてもという感じがする。単に軸を二つ用意すればいいと思うのだが、哲学者はそうは思わないようだ。粒子と波動が共存している、それと似ているだけの現象かもしれないのに。
 橋爪先生の本とはまた赴きが違って、平易な言葉で難しいニュアンスがきちんと表現されている。これが哲学の全てであるとは思わないが、雰囲気はこんなもんなのかなと思える。哲学というのはなんか理屈ぽくて、クスリとして効く部分と、どうでもいい細かい話に分かれるんだなあ。私はこの著者のことがなんか気に入らないんだけど、毒吐きが心地よかったりする。毒の部分が私の志向とマッチしてるように見える。私は私自身が好きではない。でも、その裏返しも真なんだけどね。