びーの独り言

どこいくの?どっか。

ニッポンの素材力

ニッポンの素材力

ニッポンの素材力

 いつぞや三省堂で買った。題名にズキュンときた。金曜日に八重洲ブックセンターに行ったとき、思わずもう一度買いそうになったw。
 最近の新素材のトピックスが軽いタッチで書かれている。聞いた事のない話ばかりで、どこか腑に落ちない部分もあった。なぜ素材が強いのか、という部分の各社担当の言葉が、総じて同じであるのが面白かった。諦めない、凝り性、役に立つものを作りたいという思い・・・素晴らしい話に聞こえるが、そんなに現場は甘くないだろう。「上から品質を落としてコストダウンしろと言われたらどうするか」という問いに「そんなんだったら会社辞める」と書かれているが、読者に対する煽りにしかみえない。この本はくどいくらいきれいにまとまりすぎている。各会社の宣伝も兼ねてるように思う。
 うちもそうだけど、製造業は海外に出て行かないとにっちもさっちもいかなくなってきた。中国やアジアは人件費も安く生産規模が大きすぎる。これに太刀打ちするためには汎用品を捨てて、オンリーワンを目指すしかないように思える。オンリーワンを実現するのは素材であると思う。うちの会社は素材を持ってるが、ほとんどいじることができない。素材というよりは原料を供給しているにすぎない。かと言って設備をいじれるわけでもない。ただの加工屋。基本技術もないし、展望もない。本社の頭のいい誰かがうまくやるだろうって思っていたが、最近ただの受身だということがわかってきた。閉鎖的な業界に突如アジア勢が押し寄せてきて、さあ困ったと慌てている。種を蒔いてないのに実を求められる。だからってうちが悪いわけとは言うわけではない。うちはうちで最善を尽くしてきた結果だ。また、この本に載っている会社がうまくやった部分はあるだろうけど、それは事業分野がたまたまそうだっただけであり、外見はいい顔してるだけでしんどいと思うのだ。所詮この本が正しいかどうかは30年経たないとわからない。もっと言えば、私が定年までにうちが潰れてなければいいw。
 いくつかハッとさせられる記述があったのでメモっておく。「出光佐三『1黄金の奴隷となるな、2法律・組織の奴隷となるな、3権力の奴隷となるな、4理論と数の奴隷になるな、5主義の奴隷になるな』」「大原総一郎『このような住みにくさをも造りだした経済活動が高い経済成長の内容であるなら、われわれは無条件にそれを謳歌するのに躊躇せざるをえない。幾多の政治的社会的混迷を生みながら、国家と国民の正常な利益を犠牲にした単なる投機的な営利活動が生み出していく経済社会は、創造されたものと排泄されたものとの混浴状態を造り出した。事実、日本の経済と、そしてそれが生み出している社会には、その悪臭がただよっているではないか』」「長渕剛『お前がどうするかだ!お前がどう動くかだ!決めるのは誰だ?やるのは誰だ?行くのは誰だ?そうお前だ!お前が舵を取れ』」
 内容には信じる部分とそうでないとこがあるが、素材の情報が書かれているので参考になると思う。「ブレイクスルーの科学者たち」と同じ感じ。