びーの独り言

どこいくの?どっか。

抄訳 葉隠

[抄訳]葉隠

[抄訳]葉隠

 これもPHPシリーズ。本の存在は知っていたが、その題名以外は何も知らなかった。一応3回読んだ。
 時は1710年、佐賀藩の武士であった山本常朝という人物が出家して過ごしていた。関が原の戦いから100年以上が経過し、平和な時代に武士の存在意義もよくわからなくなってた。武士とはかくあるべきと色々語った言葉を田代陣基という若い侍がメモったものである。
 内容は多岐に渡る。相互に矛盾してたりするし、とても俗っぽいくだらないことも書いてる。論語などと比べると見劣りする内容ではあるが、完成度が低いことが返って逆に親近感が湧いたりもする。
 この本で一番有名なフレーズは「武士道といふは、死ぬ事と見附けたり。」であろう。戦争の時代には御国のために死ぬものだという意味に使われたそうだが、別に死ぬことを推奨しているわけではなく、死を覚悟するくらい必死で物事に向かいなさい、という意味である。孫子の言うところの死地を自ら演出するわけである。その割には本人は出家してるじゃん、なんて突っ込みもあったりする。
 また、あまり目立たないが、「忍ぶ恋」という概念を挙げている。恋は相手に悟られない方がいい、という。そんな考え方をする人がいたのかと個人的にはすごくショックだった。自らそれを選ぶとするなら究極のMに違いない。でも、よく考えれば、失恋した人は誰でもそう思うのかもしれないし、ただの負け惜しみなのかもしれない。
 印象に残ったフレーズをメモ。「最初から雨に濡れるものと覚悟してかかれば、悩み苦しむことなく、同じように濡れるまでのことだ。このことはあらゆることにあてはまる心得である」「名人のことを見るにつけ聞くにつけ、自分などとても及ばないと思うのは意気地がないことだ。名人も人間、自分も人間である。そこに優劣があるものかと思いをいたせば、もう、その段階で創造的人生に入ったも同然である」「人付き合いというものは、飽きる心が相手に芽生えないようにすることが大事だ。いつも相手が新鮮に受け止めるようにすること。これはちょっとの心がけで変わるものである」「書いたものはあとに残るものだから、手紙を一通書くにも、先方がこれを掛軸にするものと想定して、気をつけて書くべきだ」「今この時この瞬間の一念のほかには何もないのである。この一念と一念とが積み重なって、一生がなっているのだ。このことに気づけば、何もあくせくすることもなく、何も求めることもない。この一念を大切にして暮らすまでのことである」「こころが安定していないときは、思案もまとまらぬものだ。こころがとらわれることなく、清爽としていて、凛としているのならば、七つ息をする間に思案に決着がつくものである」「始めに勝つこと、それが勝負のすべてを決定づけるものだ」「今この時がその時であり、その時は今この時なのだ。二つの時を別々のものと認識しているから、その時に遅れをとってしまうのである」
 今回のこの本は、原著の一部抜粋したものである。選んでる話がハテナだったり、解説が的外れだったりする。三島由紀夫の解説本がよさそうな気がする。