びーの独り言

どこいくの?どっか。

新訳 自警

[新訳]自警

[新訳]自警

 既出の「論語」「孫子」はPHPから出ていて、これもその流れで購入。元々こういう本があることは知らなかった。「武士道」の新渡戸稲造だから何かあるかもと期待。これは現代語訳になっている。例によって3度読んだ。
 新渡戸稲造はクラーク博士で有名な札幌農学校の出身。キリスト教にはまって、海外留学も経験。「武士道」は外国に日本文化を紹介するために書かれているので原文は英語だったりする。さて、「自警」は儒学の中に西洋思想が入り込んできて、何を規範にして行動すればいいのか日本全体が迷っていた時代の本。修養書と呼ばれる本である。当時は新鮮な話だっただろうが、今では当たり前のことを言ってるように聞こえる。つまり、今でもそんなに色褪せてないことに驚く。内容は、儒教個人主義をどうやって折り合いをつけるか、ということ。また、感情を選択するのか理性を選択するのかは場面場面で異なる、ということを説いている。
 例によって印象に残ったフレーズをメモ。「狭い自分の好き嫌いを標準として世の中を生きていくというのは、ただでさえ狭い世の中がますます狭くなり、ただでさえ苦しく悲しい世の中がいっそう苦しく悲しくなって、人や自分や天を恨み、晴天にわざと暗雲を作って不愉快に一生を送るようなものである」「渡る世間に鬼はいない。あれこれ私は大勢の人に非難を受けるけれども、また世の中には心からの友がいるという自覚を強く持って、時々不愉快なことのある間にも、このように小さなことが、光のごとく輝いて人生の味を甘くしてくれる」「仕事を処理していくには、必ずまずその結末をあれこれ考えて、そしてその後に着手せよ。舵のない舟を行かせてはいけない。的なくして矢を放ってはいけない」「我々のすべての働きは理想を実現しようとするためで、理想なしにぶらぶら流れのままに生きていることは存在するというだけで、人間の生活をしていると言いがたい」
 現代の自己啓発本に比べれば、圧倒的に読みにくい。現代訳が悪いのかもしれない。お陰で眠くて仕方がなかった。内容も当たり前っぽいので、特別読む必要はないだろう。