- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 文庫
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太宰治の第3弾。「人間失格」が面白かったので、並んでいつも出てくる「斜陽」も気になったわけで。
率直に感想を書くならば、違和感がバリバリだった。ヒロインがしっくり来なかった。男性の作家が女性の心理描写をすることは果たしていいのであろうかと私は普段から考えている。いくら設定が貴族だからって、そんなに頭が良さそうでもないのに、チェーホフだの社会主義だの革命だのところどころ出てくる単語がぶっ飛びすぎているように思う。弟は自殺して、やたら長文の遺書を残している。見事な遺書なのだが、そういうのをひけらかしてどうしようというのだろうか。夏目漱石「こころ」もそうなのだが、死ぬための理由を延々と書かれても、理解はできるが、同調はできない。遺書を書く行為自体が未練たっぷりに思える。こういうのが、名作だと言われるのはどうなのだろう。確かに鋭い指摘のように思えるのだが、肝心な部分をもっとストレートに表現ってできないものなのか。違和感を感じる部分はおそらくある程度のデフォルメをしてメッセージを伝えやすくしてると思うのだが、何かのストーリーの形を取らずとも、伝えたいことを一言で言えないかなあ。こういう文学の評価されてる点というのは、著者らの苦悩に比べれば、私なんてマシだって思えばいいのだろうか?それとも考えがとても深い、表現力が巧みである、一体どの部分なのだろう。違和感バリバリだということは、それだけインパクトがあったということだ。何か深層心理に訴えかけるエッセンスがあったのだろうか。それとも、今の私では到底理解の及ばない何かがあるのだろうか。