びーの独り言

どこいくの?どっか。

2010/10/03(日)「弘前2」

 昨晩から意味を考えていた。自業自得なのに何かのせいにしていた。理屈で考えれば破綻してるけど、そういうのを許すのが人生と思いながらも、私の性格では非常に難しかった。とにかくテンションの下がり方は半端じゃなかった。これを打ち破るには走りきるしかないと思った。でも、そんなことができれば最初から悩みはしなかった。
 「東横イン」の朝食を利用することは最近ではほとんどなくなってた。それは乗り鉄の時間が早すぎるからである。今日はマラソンなので腹一杯食べるにはバイキング形式の方がうってつけだった。朝7時のサービス開始時間には行列ができていた。やる気のあるジャージ姿が多かった。雰囲気に感化されて少し楽しくなった。
 荷物はホテルに置いて手ぶらに近い格好でシャトルバスに乗り込んだ。スタート地点の観光館に到着。参加者の体型を見てたけど、メタボ仲間はいなさそうだった。スタート地点の端っこで小さくなってたらいきなり浣腸された。Hさんだった。敏感なところにヒットしたのは秘密だ。会話が一瞬だということは意識してた。スタートした瞬間に孤独になった。スタートの下り坂で見えた岩木山は立派だった。なぜか昨年の記憶が全くない。この先を考えるとここが景色のピークに違いなかった。
 練習してないおっさんが取れる作戦はなるべくゆっくり行くことだった。わずか2kmがとても長く感じられた。ふくらはぎが悲鳴をあげていた。8kmで65分、超遅かった。馬ならコーンビーフだろう。雨も降ってきた。まさに泣きっ面に蜂、堕ちるとこまで堕ちた。道にいるスタッフさんが応援してくれるので「ありがとう」と言いながら走った。走るより感謝を伝える方が意味があると思えた。15kmを越えると下ばかり見ていた。ハーフまでがとてつもなく長かった。すでにハーフまでは頑張ろうという心境になっていた。
 ハーフは2時間43分。昨年から22分遅れ。歩きたかったが、後ろから女性2人に追い立てられた。その2人は道行く人に「頑張れ」とか強烈な激を飛ばしていた。2人は私の後ろにぴったりついて、ずっとしゃべっていた。特に1人が大阪の人で、まるでラジオを聴いてるみたいに面白かった。25km付近で抜かれたとき抜き返す元気はなかった。スケベパワーもここで使い果たした。
 立ち止まると歩くことすらままならなかった。太ももとふくらはぎが強烈な筋肉痛に襲われていた。一度止まるとおしまいなのは経験上よくわかっていた。もう完走は頭にはなかった。終了まで3時間弱も残っていた。ダメだとしても少しでも先に進みたいと思った。とぼとぼと歩いた。さっき抜いた人に抜かれた。歩いてる人にも抜かれた。抜かれたことはどうでもよかった。そのうちにリタイヤ車に乗る人が出てきた。そして前後に誰も見えなくなった。透明なカッパを着て誘導してくれるスタッフだけがあちこちに立っていた。雨の中15時まで立つらしい。よほど私より大変じゃないのかと思った。私が歩いていても応援してくれた。諦めてるのに申し訳なかった。歩いてるのはただのエゴなのに。
 歩いているうちに何かのせいにする感情は消えていった。どう考えてみても本人の自由意志で選択したこと。だから1日くれてやると思った。止めたってホテルで何かするわけじゃないし、せっかくだしとことん弘前を感じることにした。道端のりんご畑を見ると、手を伸ばすと取れそうな位置においしそうなりんごがたわわに実っていた。落ちている実がもったいなかった。
 6時間前になるとスタッフは片付けに入っていた。交通規制は解除され、軽トラがカラーコーンや看板を撤去していった。コースを示すものは道端にあるのぼりだけだった。誰もいない道をずぶ濡れで歩いた。何も考えてなかった。6時間を越えると自転車が逆走してきた。リタイヤ車が迎えにくるという。そこは38km手前だった。感動も達成感もなかった。練習しなければこんなもんだし、想定の範囲内だった。時間が来て終わっただけだった。
 リタイヤ車は残り1.5km付近を走っていた女性を回収しただけだった。普通の人は無理だとわかったらさっさと諦めるらしい。人生諦めが肝心なのだろう。ゴール地点の荷物預かり所にはかばんが2つしかなかった。引換券を渡すまでもなくかばんを渡された。更衣室のテントは撤収されつつあった。2Fの更衣室には1組の団体がいるだけだった。寒くはなかった。濡れているのが気持ち悪かった。こんなときに限って傘をホテルに忘れていた。市営バスがわからないので、タクシーでホテルに帰った。
 ホテルの風呂が気持ちよかった。すぐにご飯が食べたかったが、夕食まではもう少しだった。ベッドに寝転がってテレビを見ているとそのまま寝そうだった。17時半頃、飲みは駅の近くの「わいわい」にした。昨年も入ったけどいい印象はなかった。けど、雨の中筋肉痛で動きたくなかった。カウンターに座ると店長らしき人に話しかけられた。その瞬間昨年のことを少し思い出したような。十和田バラ焼きイカのドロ焼きを頼んだ。両方ともすごいうまかった。一つ隣の席にジャージのおばさんが座った。マラソンに参加した人だった。今回の話をしたらそんなのたくさんあるって言われた。あっけらかんとして楽しい人だった。救われたような気分だった。人生うまくできてるのかもしれない。終わりよければ全てよし。