びーの独り言

どこいくの?どっか。

陽だまりの彼女

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

 三ノ宮で平積みになってるところを偶然見つけた。ジャケットと題名にひかれた。作者の名前は聞いたことがなかった。ランダムに選ぶのは読書の幅を広げる。
 これはやばい。やばすぎる。私の描く理想の恋愛像にかなり近いものがある。主人公のよろこびがそのまま自分にシンクロする。一つの出会いで簡単に世界は変わる。当たり前だった景色の意味が変わり、不毛だと思ってた時間もすべてがこの瞬間のためにあったと思える。早く会いたい、ずっと一緒にいたい、そういう感情がどれほど人間の根源に関わり魂をくすぐるか。
 手にしていた幸せな日々は突然終わりを告げる。それは伏線でわかっていた。不条理な別れ。別れに納得がいくものはないのかもしれない。私は別れのストーリーにとても弱い。君がいない世界で生きる意味なんてあるのか。道端でわけもなく悲しくなって涙が出てくるという場面、私だって同じ目にあったらそうなってるだろう。
 後書きの人が「読み返すと伏線に気づく」と書いていた。あやふやな部分を回収してみたら、これが一番やばいかもしれない。狙ってかどうかわからないけど、本当にやられたと思った。
 架空の設定、架空の人物、都合のいいストーリー、人によっては幼稚っぽいと思うかもしれない。でも、リアル以上に心に入ってきた。まるでそこに本当にいるかのような描写。自分の半生を思い返しながら、疑似体験してた。小説のことをたいしたことないと思ってたけど、この話には脱帽だ。