びーの独り言

どこいくの?どっか。

はい、泳げません

はい、泳げません (新潮文庫)

はい、泳げません (新潮文庫)

 こないだの3連休のとき東京駅で見つけた。基本的に本に関しては冒険をしないと思っているのだが、この題名にはとても魅かれた。新刊でもないのになぜ店頭に並んでいたのかわからない。次に行ったときにはなかった。
 題名から予想がつくように、泳げない作者が泳げるまでのどたばたを描いた作品。まさしく私のためにあるような本。共感を覚えまくり。私はほとんど自己流でやってて、その手の本は読まない。自分でいろいろ試しながらやるのを楽しんでいる。けれど、フォームに自信が持てずにいつも悩んでいた。この本で登場するコーチはとてもユニークだ。腕を大きくかく、水をつかむ、そんなことを教えるのではなかった。身体に余計な力を入れずに、水の抵抗を減らして美しく泳げば前に進む、泳ごうとするのではなく、伸びるのだと。この一言がどれだけ私を勇気づけたか。他にもありがたいアドバイスがたくさんあり、私にとってはどれも目からウロコだった。作者の思慮深さや観察眼にも恐れ入った。コーチの言ったことを理解しているこそ正確に伝えることができる。軽いタッチでいろんな切り口から余すところなく水泳の魅力を伝えている。単独で泳いでいると、誰かと体験を共有することがない。基本共有する必要はないんだけど、なんだか寂しかったりもする。誰でも同じようなことを考えるんだな、ということがわかっただけで、ずいぶん救われたような気がする。思わず作者にメールしたくなるほどだった。
 2日で読める。軽いけど、哲学的。そして面白い。読後感が爽快。私にとって大当たり。不思議な巡り合わせ。忘れないために3回読んだ。