- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/07/29
- メディア: 文庫
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「このミステリーがすごい2009年度版」の1位。帰省している間、新聞で紹介されてて気になった。とてもうまいけど、賛否が分かれるという作品。私はミステリーは全然読んだことがないに等しい。もし、この本を読めば、ミステリー全般について、面白いのか面白くないのか判断を下せるのかもしれないと思った。
賛否が分かれるというのはわかる。読後がすごく気持ち悪かった。猟奇的殺人のシーンが気持ち悪いのもさることながら、全編に漂う異様な緊迫感、登場人物の行為の異常さ、だんだんと明らかにされる謎解きが二転三転して目が回る。証言が本当かウソかは本人以外は知りえない、という事実がさらっと出てくることが意外で、ミステリーは案外人間の深いところをえぐってるのかもしれないと思う反面、こんな細かい伏線まで回収するのかよといった作為的なとこが鼻について仕方がなかった。ミステリーの作り手はやりたい放題だ。どんどん三段論法的に新しい設定を何重にも加えていけばいいのだから。未知の方程式を解くのにパラメータを増やしていくのと似てる。そういうわけで場面展開が頻繁すぎて、よくわからないまま読み進めて、謎解きのときにハテナってなってしまった。認識論まで飛び出せば、そりゃわけがわからんよ。夢オチがよぎったのは案外間違いではなかったと自慢してみる。
この作品だけでミステリーが嫌いになったりはしないが、新聞の書評をあてにすべきではなかった。あまりにコアすぎた。せめて誰でも知ってるようなとこから入れば良かったと反省。