びーの独り言

どこいくの?どっか。

2023/08/26(土)「開業」

 朝はゆっくり寝た。すっかり満足した。満足したら出かけたくなってきた。しうまい弁当からのますのすしを決めようかと、歩いて駅に行こうとした。外は灼熱地獄だった。駅の近くまで歩いてるうちに、今日は宇都宮ライトレールの開業日だということを思い出した。一から路面電車が出来るのは75年ぶりらしい。こんなのは一生に一回のことだ。しかも、4年間住んでいた宇都宮。今日しかない!部屋まで引き返して、すぐさま準備をした。ネタ切れ感が漂う最近では珍しくワクワクした。
 宇都宮ライトレールは、宇都宮駅東口から郊外の芳賀高根沢工業団地を結んでいる。途中で鬼怒川を渡り、清原工業団地を通って、芳賀高根沢工業団地に至る。私が住んでた25年前には既に構想はあったが、冗談だと思っていた。宇都宮は車社会だし、芳賀なんて田舎に路面電車を敷くような需要があるとは思えなかった。また宇都宮という閉鎖的で排他的な町がそんな大きなチャレンジをするとは思えなかった。それが年が経つに連れてどんどんと計画が進んでいってるようだった。どうやら芳賀にあるホンダの通勤渋滞を緩和するためらしくて、ホンダが全面的に支援してるとのこと。車メーカーが路面電車を推すというのも不思議な感じはしたが、本質を追い求めるホンダらしい決断かもしれない。もしかすると、路面電車を中心としたまちづくりを起案したいのかもしれない。
 採算性について心配する声は当然大きかった。私も正直なところどうかなと思っていた。歴史的に大都市からほとんど路面電車がなくなったという事実がある。残ってるところでも広島以外は赤字ではないか?特に宇都宮なんかは何にもないところを通る。どう考えても赤字必死で毎年税金投入が必須だろう。その証拠に期待感に溢れる記事ばかりで、収支の予測を見たことがなかった。
 速達性という面でも、あまり魅力的には思えなかった。路面電車宇都宮駅から芳賀までは50分もかかった。これは路面電車が途中で遠回りしてるからだ。車なら真っ直ぐ行けるし、ドアツードアでずっと座りっぱなし。帰りにも好きに買い物に行ける。夏だったら外で待つのは暑い。冬だったら寒い。雨でも駅まで行く必要はない。そんな簡単に車から徒歩にシフトできるだろうか?それとも条例で工業団地への車通勤を規制するつもりなのか?
 今回の実現に漕ぎ着けたのは、強いリーダーの存在は間違いないだろう。それから国の強力な後押し、壮大な社会実験という側面があったのかもしれない。私は環境に配慮というだけで、不便さを求めるような政策は通用しないと思っている。ただ電車好きで新し物好きとしては頑張って欲しいと思うし、行く末にはたいへん興味がある。
 1140、出発。給油後、12時に再出発。東関道、外環、東北道北関東道上三川IC下車。渋滞はなかった。国道4号線のバイパスから宇都宮市街へ。町の様子は普段と変わらないように思えた。
 1350、中華とんとん。駐車場は空いていた。目の前の線路の周りは車は多かったけど、普段とまったく変わらないように見えた。冷めてるなあ。興奮してるのは私だけかな?
 店の前には行列はなかった。入り口の前には「営業中」の看板。イケルやん!入り口のガラス戸には貼り紙。ん?「今日は2時で終了」。セーフ!
 店は満員で一つだけカウンター席が空いていた。これは意外だった。普段行列ができるし、さらに宇都宮ライトレールの開業だから、全然ダメかもしれないと思っていた。カウンターに座った。隣の太った男性はカメラを持ってて同業者ぽかった。奥のカウンターには黄色いお揃いのシャツを来た人たちがいた。何かのスタッフか?
 ジャンボびっくり餃子セットのご飯大盛を注文。ジャンボはかなり久しぶりのような?食べごたえ満点。うまかった。締めの中華スープがたまらんのよね。すると、外を車両が通過していった。同業者も反応していた。
 お会計は最後の人となった。お母さんに「今日はライトレールが開業なの」と言われた。「私も見に来ました」と言った。ついでに「25年前のお父さんの時代から来てます」とアピールした。
 店を出たら、同業者が立って線路の方を見ていた。私も見ていた。左の方に峰停留所があった。そこにはさっきの黄色いシャツの一団がいた。開業のスタッフの人たちだった。暑いのにお疲れ様です。次はいつ電車が来るかと調べたら、1時間くらい後だった。あれっ?こんなに本数少ないのか?そしたら、営業運転は15時からだった。そうなん?思いがけず一番電車を見れるのか?
 餃子屋の駐車場の車の中でしばらく時間を潰したけど、ずっといるわけにもいけないので、あてはないけど場所を移動することにした。ライトレール沿いに行くと、黄色いシャツを着た人たちがたくさんいた。ある建物の壁には、開業を記念して「開業おめでとう」と一文字一文字が掲げられていた。その下に小さく「◯◯自治会」となっていた。黄色いシャツの人たちは自治会の人かもなあ?
 大きな駐車場のローソンがあったので、車を停めた。時間を稼ぐために牛歩戦術で行動した。トイレ行ったり、ガリガリ君買って、車の中で食べたりした。だんだん車がローソン駐車場に入ってきた。目の前の歩道に老夫婦が来て、おばあさんが電柱の日陰で立っていた。5分前となり、私も車の外に出てスタンバイした。観客は点々としていた。
 電車は宇都宮駅の方から来るとばかり思っていたら、反対方面から来た。真新しい車両。黒と黄色を基調とした近未来的なカッコいいデザイン。ガラスをふんだんに使っており、全面的に光を反射した。千葉モノレールの最新型に似ていると思った。ずっと動画を撮っていた。中は超満員というわけではなかった。満員でないのは整理券を配ってるからだろう。中には手を振ってる人がいたが、全体的に思ったほどの熱狂ではなかった。すぐに宇都宮駅からの電車が来た。こちらも一緒だった。
 15時半、出発。終点の方に行ってみることにした。ライトレールは国道4号線バイパスの前で高架となり、直角に曲がった。国道4号線バイパス沿いには車両基地があった。私はレールとは離れて、そのまままっすぐ進んでいった。やがてまたレールは戻ってきた。しばらく並走すると今度レールは左に曲がった。そこにはホンダがあった。おそらく終点だろう。私は引き続きまっすぐ進んだ。
 すぐに折り返して線路に戻ると、停留所に上りと下りの電車が交換していた。車に乗ってたから写真は撮れなかったが、いい絵だった。
 さて、今日はライトレールには乗るつもりはなかった。おそらくたくさんの人が整理券を求めているからだ。この後は車中泊して、明日観光することを考えていたが、夜が暑くてたいへんそうだった。それに宇都宮でそんなにワクワクするようなところはなかった。おとなしく千葉に帰る方が価値が高いと判断した。
 帰ってからわかったのだが、15時の営業運転前に関係者を乗せた車両が発車したようだった。鼓笛隊が演奏する中、路面電車は発車していった。私が見たのは厳密に言えば、一番電車ではなかったかもしれない。でも、別にそれでも満足はしていた。見に行ったということが、ずっと自分の中で思い出に残るのだから。またそのうち乗りに行こう。