6時半起床。乗り鉄の朝は早いが、地方に行くと電車がないから遅くなる。
プチホテルの朝食は600円でトーストと聞いていた。トーストなんだなと思っていたら、凄く豪華で驚いた。トーストにはバターとジャム、山盛りのサラダ、ウインナー、ベーコン、ゆで卵、ヨーグルト、味噌汁、それに飲み放題のジュースは牛乳、オレンジジュース、トマトジュースから選べた。これは食べ過ぎ注意のおっさんには嬉しい悲鳴であった。まるで旅人を応援してるような内容に感動するとともに、オーナーはきっと旅人に違いないと思った。こんなことは今までしなかったのだが、部屋のアンケートにお礼を書き込んだ。
750チェックアウト。高知駅までは徒歩5分。昨日のぐずついた天気は回復し、よく晴れていた。今日も暑くなりそうだった。みどりの窓口で宇和島までのチケットを買うと、乗車券3000円、自由席特急券1200円だった。18きっぷの使用も考えたが、窪川で衝撃の2時間49分待ちだった。かつて窪川でそれくらい待ったことあるけど、あそこには本当に何もなくて本当に退屈だった。さらに、この暑さ。涼める場所なんてなかったような?課金して待ち時間が半分で済むなら価値はあると思った。
820特急しまんと1号中村行き。意外に乗り込む人は多かった。自由席の2列シートには誰かがいる状態だった。
電車に乗る時は大体海側に座る。そうすると景色が楽しめるのだが、ここではそれが通用しなかった。線路はほとんど山の中を走っており、山側の方が開けていた。須崎を越えてようやく見事な海が見えたが、それもわずかだけだった。きっとこの区間では私のことだからいつも騙されているに違いない。
926窪川下車。別に狙ったわけではなかったが、新幹線に似せた鉄道ホビートレインが停まっていた。お前か!普通の単行に無理矢理新幹線ゼロ系に似せた張りぼてを付け、カラーリングを新幹線ぽく白と青で仕上げていた。写真ではショボかったが、実物は頑張ってる感があった。ただ、顔がついてるのは後ろだけだった。それにしても、こいつが登場した時から思うのだが、誰がこんなの企画したんだろうか?集客策のつもりなのだろうが、まったく四万十川の雰囲気に不釣り合いだと思う。素朴な田舎の雰囲気を楽しみに来ているのに、露骨に観光客狙いのことされたら興冷めしてしまう。リゾート白神とは大違いだ。
窪川駅は思いがけず改装されていた。待合室も冷房が効いていて、喫茶店のようなおしゃれな木目の机と椅子が置かれていた。しかも、コンセントまで。これは嬉しいことだった。
一応、外も少しだけ散策した。窪川駅の隣には土佐くろしお鉄道の窪川駅があった。なぜ第三セクターになると、駅が別になるのだろうか?JRの嫌がらせにしか映らないのだが?
発車10分前に新幹線に乗り込んだ。中は天井以外は真っ青にラッピングされていて、シートのモケットもカーテンも青の特別製だった。ホビートレインと言うだけあって、水戸岡車のように透明ケースにNゲージトレインが飾られていた。外見のイメージとはまったく異なり、だいぶかっこよかった。乗客は22人でロングシートは微妙な間隔を空けてほぼ埋まっていた。ほとんどが同業者ぽく見えた。
1043に新幹線は出発した。次の若井駅までが土佐くろしお鉄道の中村線で別料金区間である。若井を過ぎると、中村線と分岐するポイントがある。ここで首を伸ばしていたのはテツおた確定である。右側に分岐が現れたが、電車はきっと皆の予想に反して左側に入った。中村線とクロスする構造になっていた。
三角形の山と山の間に四万十川はエメラルドグリーンの水を湛えていた。日本最後の清流と言われている。まるで中国の水墨画のような豪快な景色である。進行方向左側に陣取ったせいで、四万十川の水面がギリギリ見えるかどうかだった。さすが同業者はどこに座ればいいかわかっていらっしゃる。ここまで来たのに悶々としていた。この旅行こんなんばっかりか?
土佐大正駅で衝撃の23分待ちとなった。こんなんあったっけ?そこからは、テツおた達の大撮影大会となった。もしかしたら、普通に通りすぎてたであろう駅は、夏の田舎の駅という雰囲気が満載で、思い出に残るものとなった。
この駅ではしまんトロッコとの列車交換があった。しまんトロッコには乗ったことはないが、これができる前のトロッコには乗ったことがあった。気動車はJR九州ばりに真っ黄っ黄で、その後ろにトロッコが連結されていた。後で調べたら本当に水戸岡車だった。何人かは乗り換えていた。なるほど、その手があったか。
土佐大正駅からはぐねぐねした四万十川を線路が真っ直ぐトンネルと橋で串刺しにした。この線で一番の見所だった。毎度感想は同じで、よくもまあこんな人家のない山奥にこんな構造物を作ろうと思ったものだ。実際、この鉄道に観光鉄道以外のニーズはないように見えた。
半家駅の辺りからこちら側の窓の方に四万十川が現れるようになった。以前トロッコに乗った時、沈下橋の上に海パンの子供が5人くらい並んでいて、一人一人次々に川に飛び込んで、電車に手を振ってくれた。その時の動画を撮ったはずなのに、うっかりその場で消去してしまった。あれは大ボーンヘッドであった。今回、その沈下橋を探した。沈下橋はあったが、子供は誰もいなかったし、視界を灌木が邪魔していた。
江川崎で9分待ちとなった。ここでの休憩は定番であった。またしても大撮影大会となった。前に来た時は日本での最高気温41.0℃を記録した数日後だった。最高気温を示す簡単な看板が出ていたが、今回それにまつわるものはなかった。江川崎で突然日本最高温度を記録したことについては、説明がつかないらしく疑惑の記録のようになっている。5年間ナンバーワンを維持したが、2018年に熊谷市に奪還された。
江川崎から先はもう見所はなかった。江川崎から乗ってきたおっさんが、おもむろに木のお盆を出して、酢でしめた魚の寿司やじゃこ天、日本酒、ビールで晩酌を始めた。魚の臭いがプーンと車内に漂った。魚なんて冷えた落ち着いたところで食べた方がおいしいのに、なぜわざわざ衆人環視の下で食べるんだ?いろんな人を見てきたが、この人はヤバかった。
松丸駅かな?高校生が3人乗り込んできた。近永駅では大量に乗ってきた。テツおた達は夢から冷めて急に現実に戻されたらしく、席で大人しく縮こまった。宇和島が近づいてくると、お客さんはいっぱいになった。
1329宇和島駅着。ここは頭端式ホームである。驚くべきことに宇和島駅は国鉄よりも早く、宇和島鉄道という軽便鉄道の駅として開業した。当時は接続路線がない独立路線だった(因みに有田鉄道や鹿児島交通も同じ)。後に国鉄予讃線が接続した。
宇和島には最初に来たのは乗り鉄の途中で、駅すぐにあったとみやという店で鯛めしを食べて感動したのを覚えている。次に大学友人Sと12月にバースデーきっぷ(特急乗り放題)でやはりとみやで鯛めしを食べた。前回の2013年は二泊してじっくり観光した。おそらく乗り鉄で行き詰まっていて、城や博物館巡りに移行した初回だと思う。宇和島にはとても良い印象を持っていた。その時にはかどやで鯛めしを食べて感動したのを覚えている。
今回、駅に近かったとみやは失くなっていた。観光マップでは別の不便な場所になっていた。代わりにかどやが凄く目立つようになっていた。14時、早速かどやに行った。善は急げで鯛めしを注文した。鯛めしはだし汁と生卵を溶いて、そこに鯛の刺身を混ぜて、ご飯にかけて食べる。待ちに待った8年ぶりの鯛めしは・・・まあまあだった。とみやの時も二回目からはあれっという感じだったし、一回食べると脳みそにインプットされちゃうのかな?
14時半、店を出て城に向かった。商店街を通るとものすごい道幅の広いアーケードだった。この町はまだ昭和の雰囲気を残していた。
城山に上ると、知ってたけど、とんでもない階段だった。今日はそんなに暑くないとは言え、リュックを背負ってこの勾配を上るのはたいへん骨の折れる作業だった。息が切れて汗だくになった。
15時、本丸に到着。宇和島城は現存12天守の一つである。2013年の時はユースホステルで一緒になった茅ヶ崎のおじさんに、千鳥破風と唐破風を教えてもらった。あの日も暑くておじさんが汗だくだったのを覚えている。
お城自体は三層で小さかったが、天守から見る景色は最高だった。山に囲まれた宇和島市内が一望できた。ここからの景色は見るまでもなくよく覚えていた。前にデイリーポータルZで「ここはどこでしょう」という写真に写っている場所を当てる企画があった。普段全然わからないのだが、偶然お城の窓越しに写した写真が出て、一発で当てたことがあった。
16時、城山の中腹にある郷土資料館に行った。宇和島はよく小説で取り上げられるということで、宇和島が取り上げられている本が紹介されていた。確かに宇和島には私もインパクトを受けた。この町には旅情を引き立てる何ががあるような気がする。
17時ホテルイシバシにチェックイン。素泊まりで4400円。おそらく古いんだろうと思ったら想像通りの古さで、ご夫婦で経営しているぽかった。でも、部屋には一通り揃ってるかな。
18時半、ほづみ亭。ここは2013年に太田和彦セレクトとして訪れた。カウンターで延岡のおっちゃん2人と盛り上がり、ベロベロになるまで飲んだのを覚えている。
今はお酒は飲めないけど、何かをつまみたかった。宇和島料理にはまだまだ未知のものがたくさんあった。カウンターはアクリル板で仕切られていた。これでは知らない人と盛り上がることができないなあ。まずは場所代としてウーロン茶。オーダーを取りに来た店のおばちゃんと話した。お勧めを聞くと、深浦の塩カツオを勧められた。昨日もかつおだったけど、かつお好きだからいいか。最初から決めていた宇和島名物じゃこ天と一緒に頼んでみた。
塩カツオはスライスしたニンニクと一緒に食べた。今までポン酢でしか食べたことがなく、塩は初めてだった。脳天に電流が走るくらいうまかった。なんだこれ?かつお独特の臭みもまったくなかった。おばちゃんによれば、今日藁焼きにしたらしかった。昨日のかつおのたたきとは雲泥の差だった。昨日はこれの伏線だったのか。
じゃこ天は大根おろしに少し醤油を落として食べた。じゃこ天もまた温かくておいしかった。じゃこ天好きな大学友人Sをここに連れて来たいなと思った。
おばちゃんに太田和彦の話をした。すると3回来たと言った。会計の時、カウンターには太田和彦の本が3冊販売されていた。
明日も宇和島泊まりである。明日もほづみ亭に来よう。