びーの独り言

どこいくの?どっか。

富山から拡がる交通革命

 これも「国際ブックフェア」交通新聞社の1冊。これで「国際ブックフェア」で買った本はなくなった。富山は交通政策に力を入れている。しかし、なぜやっているのかがわからなかった。この本を読めば富山の取り組みがよく理解できるのではと期待した。
 富山が目指しているのはコンパクトシティであった。近年都市部において人が郊外に出ていき、中心部の空洞化とモータリゼーションが進んでいる。しかし、将来高齢化社会が訪れたとき、車に乗ることのできない老人は移動が著しく制限される。また市街地の拡大は除雪などの行政サービスの負担増を招く。また車社会の発達は二酸化炭素を増加させる。コンパクトシティは一ヶ所に人を集めて、人々の利便性を高めようとする取り組みである。富山は青森とともにモデル地区に指定されている。富山は他の町に比べて収入が高く持ち家率や自家用車所有率が高い。したがって、他の町よりも急速に都市の空洞化が進んでおり、早く対策に取りかからなくてはいけない。富山市コンパクトシティを実現するには、鉄道の駅を地域の拠点として、駅の回りに住宅地や商業設備を誘致しようとした。そのためには公共交通機関を充実させる必要があった。
 地方の鉄道は、だんだん乗客が減り、だんだん本数が減り、不便になるのでさらに乗客が減ることを繰り返していた。富山も例外ではなかった。まず富山市が行ったことは鉄道の本数の増発である。鉄道の利便性が上がれば、駅の近くに人は集まるし、車から電車に乗り換える人も増えるだろう。富山はJR西日本の協力を得て、高山本線にて5年に渡る増発実験を実施した。この結果、増発により乗客が増加することがわかった。時間帯別の乗客数の変化や車から電車に乗り換えた人の割合なども把握することができた。また増発の他にも、駅へのフィーダーバスの接続、パークアンドライドのための駐車場の設置、各種割引特典、新駅の設置なども行った。凄いと感じたのは各種データをきちんと収集して分析していることである。数字ですべて説明しているので非常にわかりやすい。私は社会実験をしていることは知っていたが、ここまで大規模だとは知らなかった。過去にあちこちで増発実験があったが、どれも失敗してたので、正直富山の試みも冷ややかに見ていた。しかし、この結果は非常に面白いものだった。学術的にも非常に価値があると思う。思いおこせば、昨年夏に富山に行った際には、確かに車内には混雑して立ってる人がたくさんいた。政策の効果が着実に出ているのかもしれない。
 同様の手法で富山市は閑散としていたJR富山港線第三セクター化して富山ライトレールとしてよみがえらせた。その際、鉄道から軌道に転換した。将来、北陸新幹線開業による富山駅高架化の際には、富山駅の反対側を走る富山地方鉄道路面電車と接続する予定である。軌道化にともない、ホームの低床化など全面的に設備を改装している。その際に新しい富山の町にふさわしいようにすべてのデザインなどを見直し統一した。車両も最新鋭の連接車両を導入した。本数を3倍にしたところ、乗客も大幅に増加した。現在、終点岩瀬浜の観光資源を整備しており、これからは観光客の取り込みも期待できそうだ。2009年に乗車した際には、乗ってるだけでワクワクした。アテンダントが車内アナウンスや乗客へのサービスに努め、お客さんもたくさん乗っていた。また駅も自転車置き場やバス乗り場などが整備されており、とても頑張ってる感が出ていた。
 他にも富山市富山地方鉄道の軌道部に1kmの新線を作り、環状運転を始めた。世の中の路面電車は減る一方だったので、これは非常に画期的な出来事だった。富山市上下分離方式を採用し、土地や駅の取得費用や新型車両の導入費用を負担した。富山市は公共交通機関は税金で支えるべきだと考えている。2009年に乗ったときには、乗客は少なく、車の邪魔になっているように見えた。よいことばかりではないのかもしれないが、逆に今どうなってるのかすごく気になる。
 富山市は自転車のシェアも始めた。これはヨーロッパの町では当たり前だそうだ。事業はヨーロッパの業者に委託している。市内の十何箇所にステーションを作り、ステーションならどこでも自転車を乗り捨てることができる。システムに登録すると利用30分までは無料になる。日本では導入実験をしてる町はあるが、本格導入は富山だけである。本格導入しなければ意味がないということらしい。やる気まんまんである。
 またバス停に大きな広告を掲示する代わりに、その広告料金でバス停に屋根をつける取り組みもやっている。これもヨーロッパでは当たり前だそうだ。そういえば最近東京のバス停にも増えてきたような。これはwin-winの関係でとても面白い。導入の際には規制が多くて大変だったそうだ。広告目的で歩道を占拠してはいけないなど。どうやら警察関連の規制がやっかいだとか。セグウェイや一人乗りの車も警察が許可を出さないみたいだし、警察は頭でっかちだな。
 これらのアイディアはヨーロッパの町作りを参考にしている。けれど、手本があったとしても、実行は別である。企画立案、承認、実行はさぞかし大変だっただろう。一番のポイントは富山市長の強力なリーダーシップに尽きる。これがなければ何一つ実現しなかっただろう。また実務遂行能力が素晴らしい。国や県から補助金を引きだすのがうまい。各実験のまとめやマーケティング、数字を使った説明も素晴らしい。第三者によるチェックもきちんと働いている。キャンペーンの張り方や仕掛けも効果的。事前の住民への説明もばっちりで、反対もほとんどなかったようだ。どれが欠けてもうまくいかなかっただろう。住民と行政が一体となった素晴らしいチャレンジだ。
 1日で夢中に読んだ。素晴らしい内容だった。こんなに素晴らしい内容だとは思わなかった。富山は本気で変わろうとしている。やがて日本中の町が富山を見習うかもしれない。富山に行って現状を確かめたくなった。自分の仕事に対する姿勢についても恥ずかしくなった。すべてはきちんとデータを積み上げてから始まることに気づいた。諦めてしまう前に私はもっとデータを集めて丁寧に説明を果たさなければいけない。この本はすべての人に読んで欲しい。夢がある。元気が出る。勇気が湧く。ここに理想がある。