びーの独り言

どこいくの?どっか。

未解決事件 グリコ・森永事件捜査員300人の証言

 この本を買ったのはいつだかは覚えていないが、尼崎時代だったと思う。平積みにされていて、衝動的に買った。一度読もうとしたが、面白くなくてお蔵入りしていた。何度か捨てようと思ったが、捨てきれなかった。そして遂に引越しの移動中に読んだ。
 グリコ森永事件は、1984年に起きた。企業を脅迫して身代金を奪おうとした事件であり、未解決のまま時効を迎えた。菓子に青酸カリを混入させて無差別に店頭に置くという手口や、警察を揶揄する挑戦状が、今までになくセンセーショナルであり、劇場犯罪という言葉を生み出した。事件当時、私は中学生で、現場近くに住んでいた。あの時あの辺りで一体何が起きていたのかが知りたかった。
 この本は、NHK取材班による番組企画を書籍化したもので、グリコ森永事件について再検証している。検証の手法は当時の関係者を探し当て、詳細をインタビューしている。各章は時系列に並んでおり、章ごとに違う記者が執筆している。
 インタビューが難航したことが書かれていた。既に終わった事件について語りたくないのも当然で、わざわざ昔の事件を引っ張り出して、なんで捕まえられなかったんですか、と聞くのはかなり失礼な話だ。
 本文の中でことさら強調されるのが、県警どうしの横の繋がりの悪さと、現場と上層部の繋がりの悪さであった。いまさらそれを聞かされても、まったく面白くなかった。
 この本を読んでよかったのは、グリコ森永事件の生々しい現場のやり取りがわかったことである。Wikipediaよりも詳しかった。キツネ目の男が何回も登場するが、身代金受け取りの現行犯逮捕を目指したために何度も取り逃すことになった。その後の模倣犯はことごとく捕まっているのは、教訓を生かしたからだそう。
 推理小説のように読み進められるが、結局は未解決である。読後にはもやもやしたものが残る。この事件はこのまま忘れ去られていくのだろう。