びーの独り言

どこいくの?どっか。

民王 シベリアの陰謀

 本屋に行くと店頭に積んであった。池井戸潤の久しぶりの新作。正直、前作「民王」の内容はすっかり忘れていた。
 一言で言えば、コメディである。2時間ドラマを見せられている感じ。伏線の張り方もわざとらしいし、露骨に後付け感のある情報があったり。登場人物の誰かと誰かは実は血縁関係だったり、昔どこかで接点があったり、典型的なパターン。
 新型コロナウイルスの一連の騒ぎを想起させる内容となっている。池井戸潤が途中から取り組み始めた政治の話で、最後の方にチラッと得意の銀行っぽいフレーズが入ってニヤリとさせられるが、銀行は関係ない。
 主人公がいつものように絶体絶命に追い込まれるが、ここではまったくいつもの焼けつくようなジリジリした悲壮感はない。あるのはどこか楽天的でとぼけた感じだ。
 コメディの中にきちんと社会に対する強烈な批判や警鐘が入っている。新型コロナ騒動への社会風刺がメインテーマなのかもしれない。ウイルスより怖いものを最後に指摘しているのが痛快。
 群衆のシーンが「仮空通貨」を連想させたり、ダメ息子の翔がキーマンだったり、池井戸潤っぽい作りになっている。第5章「犬に聞いてみろ」はどこかで聞いたことがあるようなw
 池井戸潤がわざわざ人気シリーズを外して、「民王」を選んだのも、本来こういうコメディをやりたかったのかなと思う。でも、最近の池井戸潤は大衆に迎合して、時事ネタばかりモチーフにしているためか、昔のキレ味がなくなったと思う。やはり餅は餅屋なのだから、硬派の銀行ミステリーをやって欲しい。半沢じゃないところで。