びーの独り言

どこいくの?どっか。

2016/06/24(金)年休「血液」

 何年かぶりの骨髄検査で、輸血するかもと言われていた。9時からの診察で注意書きには20分前に来るようにとなっていた。8時半前に待合室に入ったら、もうかなりの人がいた。ひっきりなしに看護婦さんが番号を呼んでいた。ルーチンで処置される人だろうか?
 9時10分に呼ばれて処置室に入った。まずは採血だった。椅子に座りいつもの右腕を差し出した。側に置いてあった紙に名前がたくさん書いてあった。私の名前を探すと「骨髄検査、輸血(スタンバイ)」となっていた。私の血で赤く染まった注射針が足踏み式のゴミ箱にぽいっと捨てられた。なんだかシュールだった。
 採血の後は横にあった黒い診察台に移った。診察台には白い枕が乗っており、白いカーテンで遮蔽できるようになっていた。すぐに体温計を右脇に、右手の人差し指には見たことない小さな測定器を挟まれ、左腕には血圧計を巻かれた。血圧は138で、体温は36.7℃だった。普通だと思った。
 診察台に座って携帯で作文してたら、看護婦さんがやってきて「検査技師が来たら、眼鏡をはずして、うつ伏せに寝て、シャツをめくって、ズボンをずらして下さい」と言われた。知ってると思った。すぐに検査技師さんが来たみたいで、看護婦さんと何か話していた。内容は聞きたくなかった。
 診察台に看護技師さんがやってきたので、言われた通りに颯爽とうつ伏せに寝た。枕を両腕で抱き締めて顔を埋めた。「前にやったのはいつですか?」と聞かれて、4年前くらいだと思ったが、正確に答えられなかった。「前はうまく採れなくて悲惨だったんですよ」と言うと、「そういうこともあります」と言われた。腰の広い範囲を消毒され、布を被され、「麻酔します」と言われた。腕時計は9時28分だった。麻酔はチクッとした後、皮と肉の間に沁みた。一刺しだけで終了。間髪入れずに太い針が刺された。えっ、そんなに早く刺すの?麻酔大丈夫か?針は骨に突き刺さって沁みていく感じだった。久しぶりの感覚だった。4回目にもなると比較的落ち着いていて、なんとなくこの検査技師さんはうまいなあと思った。検査技師さんはグリグリと針を動かした。いつも針が突き抜けやしないかと心配になるほど力強い。グリグリするたびに沁みるような感覚があった。吸引してるようなポンプの音も聞こえた。前半は骨髄を採って、後半は組織を採った。後半の方が痛かった。意識は腰に集中していた。雑念が吹き飛び頭は空っぽ。まるで気持ちがリセットされるようだった。ふいに患部がじわっと温かくなった。血が流れているような感覚だった。終わったのだろうか?しばらく間があいた。このまま終わってくれと祈った。無事に終わったようなのでホッとした。看護婦さんにより患部が消毒され、ガーゼが当てられた。「仰向けで寝てもらって1時間安静にしてください」と言われた。仰向けに寝ながら、患部に硬い枕のようなものを敷いた。思ったより患部が痛かった。最初のときは看護婦さんに後光が射していたが、今回はいたって普通だった。腕時計は9時38分だった。
 寝てる間はずっと携帯で作文していた。途中で看護婦さんが入ってきて、「先生から輸血をやるかもと言われていたと思いますが、採血の結果輸血することになりました」と言われた。あっけないと思った。この弱った状態でベッドに寝かされてたらなんでも受け入れるしかないだろう。
 10時40分に若い男性が入ってきた。「点滴します」と言われた。輸血の他に点滴があるのかと思った。男性は「グーパーして下さい」と言って、前腕で血管を探し始めた。血管はなかなか見つからないようだった。ようやく「チクッとします」と言われて針を刺されたが、何度か抜いては刺してるような感じだった。おいおい勘弁してよ。やはり反対の左腕でやり直しとなった。危なっかしかったが、今度はうまくいった。看護婦さんが真っ赤な血液バッグを点滴台にセットしていて、そこで初めて点滴とは輸血のことだとわかった。
 看護婦さんにシールを渡された。血液バッグの種類やロットナンバーが書かれていた。看護婦さんが別に読み上げる内容が、シールに書かれている内容と間違いのないか確認した。血液が身体に入ってくる感覚は何もなかった。看護婦さんによれば、ここからはトイレに行ってもいいし、普通にしてていい、とのことだった。「2時間かかります。今11時だから13時に終わります」と言われた。そんなにかかるのかと思った。
 輸血が始まってからすぐにさっきの体温計、血圧計、そして小さな測定器で何かを計った。「これは何を計ってるんですか」と聞くと「赤外線で酸素の濃度を計っています。」と言われた。IRを思い出した。
 ベッドに座りながら作文していた。昨晩感じていた血液をいただいてるというような重いノリはなく、いたって軽い気分で点滴してるという感じだった。骨髄検査に比べれば、まったく負荷がなかった。ずっと点滴すれば生きられるのではないかと思った。血液さえあればだが。
 周りを見る余裕ができてきた。点滴台に吊るされている血液バッグには「赤血球液-LR【日赤】」と書かれていた。バッグからは血がポタポタとチューブに落ちていた。ポンプもないのにどうして落ちるのか不思議だった。1.5mくらいのチューブは血で満たされて真っ赤だった。チューブの先は針になっていて前腕に刺さっていた。刺さってる部分は透明になっていてよく見えた。ここから血液が入ってる感覚はまったくなかったし、元気が出てきたとかもなかった。極めて普通だった。
 さすがに2時間は手持ち無沙汰だった。作文も終わり、ネットを見ていた。携帯の電池がヤバかった。最後の方はもう輸血がどうとかほとんど意識してなかった。
 終了予定の13時ちょうどに看護婦さんが来て、体温、血圧、酸素濃度を計った。最初とほとんど変わってなかった。
 13時20分いよいよ血液バッグの中身がなくなってきた。看護婦さんがバッグとチューブをはずし、チューブの中の血液をできるだけ身体に入れてから、針を抜いた。立ち上がって歩いたときふらつきがあるような気がした。輸血の影響というよりは、腰の後ろが痛くて足が痺れていた。
 診察室前で待つように言われ、14時半に診察室に呼ばれた。ここで今日初めて先生の顔を見た。前回赤血球が7.5以だったら輸血すると言われていたが、今回7.2だったと告げられた。今回初めて知ったが、1年前から少し白血球が出るときがあるらしく。転化もありうるのかなあ?
 すごく気になっていた今後の話をした。「東京に身寄りがいないので大阪での治療を希望しているが、仕事上なるべく東京にいたい」という旨を伝えた。今後MRI、骨髄シンチ、CTをやるとのこと。データ採りだけなのでこっちでやることにした。その結果を持って紹介状を書いてもらいセカンドオピニオンに行くことになった。セカンドオピニオンでは骨髄移植のできる病院で移植するかどうかを決めることになる。だいぶ前に行った虎ノ門病院か大阪なら阪大病院になるらしい。おそらく虎ノ門病院に行ってある程度先が見えたなら、阪大病院に転院した方がよさそうかな。移植の判断は、輸血の頻度、脾臓の大きさ、自覚症状などで決まるらしい。中には移植をしないで輸血でしのぐ人もいるらしいが、そういう人はほとんどいないとか。
 再来週に3つの検査をすることになった。今日の骨髄検査の結果は3週間後に出るので、別に行くことに。そのときまた輸血のスタンバイをしとくとのこと。看護婦さんから次回の予約票をもらうときに、次回の測定前の注意点を告げられた。ふいに看護婦さんにセカンドオピニオンについて話かけられた。看護婦さんから話しかけられるなんてとても意外だった。事情を話したら「それはたいへんですね」と言われた。一番の問題は大阪の部署がまったく魅力的に見えないんだよな。今の職場に満足してるわけじゃないけど、大阪はもっとはずれっぽいんだよな。仕事が変わって不幸になるなら、なんのために生きてるのかわからなくなる。いっそ骨髄移植のときだけ休業して大阪に行くというのがベストなんだが?いくつかの選択肢がありそうだなあ。
 会計は37000円だった。覚悟はしてたけど、高かった。まだ始まったばかりでこれかと。
 16時新浦安駅蕎麦屋で今日初めての食事をした。思いっきり飲みたい気分だったが、アルコールは止められていた。とにかくおいしいものを好きなだけ食べたかった。昨日からそれをご褒美に考えていたくらい。部屋に帰ってからお菓子を食べてジュースを飲んだ。眠くなったので軽く寝た。
 起きたけどいたって普通だった。輸血なにそれって感じだった。腰の後ろだけが今日の出来事を主張していた。今はゆっくりしよう。