びーの独り言

どこいくの?どっか。

無趣味のすすめ

無趣味のすすめ

無趣味のすすめ

 職場のTさんとの会話で出てきて、ネットで調べてると面白そうだったのですぐに購入した。村上龍と言えば名前だけ知っていたが、読んだことはなかったので、ちょうど良い機会だった。ただ、このハードカバーは、字数が少なくて、割高な印象。1日で読破。
 いろんなエッセーが集められている。一番最初が「無趣味のすすめ」であり、Tさんとの話になったのも私が魅かれたのもこの部分だった。「現在まわりに溢れている「趣味」は、必ずその人が属す共同体の内部にあり、洗練されていて、極めて完全なものだ。考え方や生き方をリアルに考え直し、ときには変えてしまうというようなものではない。だから趣味の世界には、自分を脅かすものがない代わりに、人生を揺るがすような出会いも発見もない。心を震わせ、精神をエクスパンドするような、失望も歓喜も興奮もない。真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクと危機感を伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している。つまり、それらはわたしたちの「仕事」の中にしかない。」。最初読んだときには、達成感を得るには仕事しかない、と言い切った部分が面白いと思った。私は逆に仕事とプライベートは分離させるものだと考えている。著者は気に入らなければ仕事しないくらいの勢いだ。これは人気作家であるゆえの理屈に思えるし、その地位を手に入れた著者の勝ちである。もっとも金のためなら仕事すると言ってるので、結果的には気に入る入らないに関わらず仕事してる節もある。それにしても、水泳や散歩は趣味ではなくリラックスするために必要と言ってる。普通そういうのを趣味っていうのではないか?そりゃ趣味よりはもっと建設的なことする方がいいだろうけど、人間は感情を満足させたいものなのだ。失意や絶望を楽しむくらいの悟りを開けるほど誰だって強くはないよ。
 著者の文章はとてもかっこよくスマートにまとまっている。文学マッチョと言われるのもわかる。好き嫌いで言うなら、あまり好きではない。スマートすぎるところが鼻につくし、どこか見下ろしている感じがする。かっこつけは気に入らないのだよ。