びーの独り言

どこいくの?どっか。

潮騒

潮騒 (新潮文庫)

潮騒 (新潮文庫)

 三島由紀夫の2冊目。初期の有名な作品。年代順に追うつもり。この後「金閣寺」が控えている。
 「潮騒」と言えば、少なくとも3度は映画化されている。裸の青年と少女の間に焚き火があって、青年が焚き火を飛び越えるシーンが有名。なぜそういうシチュエーションになったのか不思議だったし、全体のストーリーも全く知らなかった。
 脱線するが、「潮騒」と言えば、関西のお化け番組「探偵ナイトスクープ」を初めて見たときのネタであり、未だに圧倒的な存在感を持って私の脳裏から離れない。あれから17年くらいは経つだろうか。最も衝撃的なネタだったにもかかわらず、未だに再び見る機会はない。依頼者は自らを潮騒マニアと称し、映画で2回目に作られた「潮騒」を探していた。映画では山口百恵バージョンが有名だが、2回目には全く聞いたことのない女優が出ていた。探偵は北野誠。フィルムを見つけていざ上映しようとするときに、そのフィルムの内容が超ゲスな内容に差し替えられていた。北野誠が全裸で焚き火を飛び越えたのだ。
 さて、感想であるが、これは大人の童謡である。どこまでも汚れなきピュアな世界が広がっている。いつか憧れていて、そして叶わなかった夢の形が具現化している。大人であれば誰しも青春時代を思い出し懐かしく思うだろう。「仮面の告白」で魅せたドロドロした世界など、微塵も感じさせなかった。美しい描写に素晴らしい文章。難しい単語も除かれていて非常に読みやすい。ストーリー構成も素晴らしく、とてもバランスが取れている。こんな世界なんてあるわけないというのが正直なところであるが、やりすぎなくらい純粋さを追求すると逆に気持ちいいくらいだ。この読後のすがすがしさはどうしてなんだろう?ハラハラドキドキしながら、最後には電車の中で目頭が熱くなってた。いつかこの島に行ってみたいと思った。
 後書きによれば、この作品は三島文学の中でも異色であるらしい。三島文学と言えば、ほとんどが倒錯者のドロドロがメイン。本作品はギリシャ神話が元ネタで、それを日本風にアレンジしたとのこと。