あの一瞬にああすればよかったという思いがずっと離れない。その一瞬とやらは１回ではなく何回かあった。その瞬間がターニングポイントになることを知らなかったのではない。その瞬間まさにはっきりと意識していた。前に進む勇気や耐えるだけの力がなかった。自分の心をわかっていなかった。救いの手すら拒否して、海の底に沈んでいった。無為にやりすごした自分を責める以外何もない。
消臭剤はその漢字から匂いを消すものだと思っていたが、他のいい匂いでごまかすのであって、元の匂いは残っている。同じように、過去は消し去ることはできない。嬉しさも楽しさも痛みも全て引き連れていかなければいけない。この痛みにずっと耐えなきゃいけないのだろうか？もう既に過去は永遠になった。思い出だけを残して、自分で断ち切ってしまった。これからは未来で塗りつぶすことしかできない。
車を運転しながら、晴天の冬空が見えた。流れ行く雲が時間の流れを表していた。ふと「千の風になって」を思い出した。誰も私が悲しむことを望んではない。全て必然であり、これが運命だったんだと。経験を生かしていくことだ。決して過去を無駄にしないように。全てを許して笑いとばせる強さが欲しい。
