びーの独り言

どこいくの?どっか。

時刻表2万キロ

時刻表2万キロ (角川文庫 (5904))

時刻表2万キロ (角川文庫 (5904))

 宮脇俊三氏のデビュー作であり、鉄道完乗を世間に紹介した衝撃の一冊。鉄道紀行文の記念碑的作品。いまだに宮脇文学を越えるものはないと言われ、マニアの間では絶大な支持を受けている。何度探しても見つからなかったが、タイミングよく再販された。
 宮脇氏は幼い頃から時刻表が大好きであり、それが講じて国鉄全線を制覇することを思いついた。どういうふうに乗り潰しているのかと思ったら、週末を利用した強行軍が多く、飛行機、新幹線、ブルートレイン、特急、急行、タクシーを使いまくり、目的のためならお金は惜しまないやり方である。18きっぷが好きな私とは正反対のやり方である。ルートセッティングの理由が細かく書かれており、大いに共感を覚えた。北海道完乗にはさほど感動せずむなしくなって酒をあおった、という下りなんかはわかるような気がした。乗り潰すことに何の意味もなく、ただ個人のための自己満足にすぎない。最後、完乗したとき、時刻表が楽しくなくなった。楽しみは楽しみにしてる間が花なのであろう。
 デビュー作だけに文章は後に出された著作の方が洗練されているように思えた。けれど、ところどころの描写にはハッとさせられるものがあった。鉄道や人に対する敬意に溢れており、読後には心地よい爽快感に包まれた。肩肘はらず気軽に読める本で、特に鉄道好きにお薦め。