びーの独り言

どこいくの?どっか。

そうか、もう君はいないのか

そうか、もう君はいないのか

そうか、もう君はいないのか

 写真の現像中に本屋で立ち読みした。著者の城山三郎氏については、「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」の訳者として知ったが、後で直木賞を受賞した小説家として有名であることがわかった。特に経済小説という分野を開拓したことで知られるらしい。そういう視点での小説は読んだことがないが、サラリーマンの私としては親近感を覚えるところである。最近、著者が亡くなられたことは知っていた。だから、店頭で見つけたとき、題名とあいまって遺稿集であることはすぐにわかった。
 このタイトルが全てを物語っていた。奥さんとの運命的な出会いから、奥さんが癌で亡くなるまでが、静かなタッチでたんたんと描かれていた。静かではあるが、それが逆に深い愛情を表現してる印象を受けた。男というのは静かで黙ってなるべく感情を出さないようにしてる。女ってのはうるさくて明るくて、そして強くて。
 意外なことに後書きで娘さんが書いてる文章がよい補足になっていた。静かな本文とはうらはらに、奥さんが亡くなられてからの著者の落ち込みは激しかったようだ。何かで読んだことがあるが、愛すれば愛するほどに、その人を失ったときの喪失感は大きくなる。著者にとって奥さんはとても大切な存在だったのだろう。
 誰かを愛して、誰かに愛される。喜び、絆、信頼、愛情、感謝・・・自分独りでは得にくい。私が年をとって死ぬとき、人生を振り返って何を思うのだろうか。