びーの独り言

どこいくの?どっか。

鉄道廃線跡の旅

鉄道廃線跡の旅 (角川文庫)

鉄道廃線跡の旅 (角川文庫)

 宮脇俊三氏の第二弾。「大勝軒」の行列用に持参したが、面白くて一気に読んだ。宮脇氏は、鉄道紀行の第一人者にとどまらず、廃線歩きという分野を開拓したことでも知られている。私も元はと言えば、JTBから出版された「鉄道廃線跡を歩く」シリーズで宮脇氏のことを知った。
 この本の面白さは、まえがき「廃線跡歩きのすすめ」に凝縮されていると言ってよいだろう。ほのぼのとした郷愁のようなものを感じずにはいられないまさに名文である。長文になるので全ては紹介できないが、例えば次のような一文である。「かくして廃線跡の探訪は、史跡めぐりと考古学とを合わせたような世界になる。それは、消滅した鉄道を懐古する次元をこえて、現存の鉄道に乗るのと廃線跡をたどるのと、どっちがおもしろいかという境地に達する。」
 この本で紹介されているのは以下の路線である。夕張鉄道下津井電鉄、琴平参宮電鉄、南薩鉄道、奥羽本線旧線(矢立峠大釈迦峠越え)南大東島の砂糖鉄道、上山田線、漆生線、油須原線、北陸本線旧線(柳ヶ瀬・杉津と倶利伽羅越え)。まさか南大東島とは!それから私自身が面倒であんまり考えなかったところ、夕張、琴平、福岡の炭鉱路線が挙げられてるのも熱かった。下津井はうちの母方の実家が岡山だった関係上痒いとこだったし、南薩鉄道もマニア心をくすぐる一品。滋賀に住んでながら、柳ヶ瀬に気づかなかったのは悔しい限り。
 この本では一切の写真を使ってないにも関わらず、情景が目に浮かぶようである。これはすごい表現力だ。贅肉をそぎ落とした簡素でよくまとまった文章。宮脇文学に並ぶものがないというのもうなづける。後書きでこの本は「鉄道廃線跡を歩く」シリーズの巻頭エッセイをまとめたものであることを知った。今後に被ることは必至w。