びーの独り言

どこいくの?どっか。

スローカーブを、もう一球

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

 この本のことは子供の頃から知っていた。あの星稜VS箕島の延長18回や江夏の21球を取り上げている。なぜ名著と呼ばれるのかが知りたかった。旅行直前に見つけて、旅行中に読んだ。短編集。
 星稜VS箕島の死闘は当時リアルタイムでラジオで聴いていた。ラジオだった理由はTVの中継が途切れたから。とにかく凄い試合だった。今なお白黒テレビのあった狭い台所の食卓で聴いていたことを思い出す。しばらくしてこの本が話題になっていることを知った。軽く立ち読みしたこともある。ずっとずっと気になってた。
 当時の選手にインタビューして一体何を考えていたのかについて、技術論や戦術を交えながら記載している。このようなアプローチは当時とても斬新だったようだ。スポーツものの元祖と言える作品かもしれない。この本ではさらにドラマチックに哲学的に仕上げてあるように思う。脚色のきらいはあるが、今読んでも十分に面白い。
 江夏の21球を有名にしたのもこの作品である。一球一球に意味がありドラマがあったことを詳細に伝えている。星陵VS箕島も江夏の21球も非常に有名な作品であり、両方とも野球に関することに注目したい。当時スポーツといえば野球しかなかった。
 他の収録作品としては、優しすぎてプロ野球で大成せずバッティングピッチャーをやってる男、独りでオリンピックを目指すためにボートを始めた男、根性が嫌いなシティーボクサー、生活を切り詰めながらスカッシュのチャンピオンになった男、棒高跳びの日本チャンピオンの話などがある。どれも面白い。人に歴史あり。人がいれば同じ数のストーリーがあるのかもしれない。著者はこのようなマイナースポーツも取り上げ、スポーツに共通する喜びや孤独などを表現している。
 山際氏と言えば、NHKのスポーツキャスターのイメージが強い。早くに亡くなられたことが惜しまれる。