びーの独り言

どこいくの?どっか。

JR崩壊

 今年に明るみになったJR北海道の不祥事を中心に取り扱っている。鉄道分野で有名な著者が急いで書き下ろしたものと考えられる。題名がいかにもという感じで買うつもりはなかったが、立ち読みしてたらはまってしまった。
 JR北海道は2011年に石勝線のトンネル内で特急が脱線炎上するという大事故を起こしてしまった。この事故の原因究明の最中、なぜかJR北海道の社長が行方不明となり、海から遺体となって発見された。今年になってから、やはり特急が小さな事故を連発した。そして、お盆には大沼駅構内で貨物列車が脱線。原因は線路の幅が広くなっていたという驚くべき理由だった。それから緊急点検を実施すると同様の異常箇所がたくさん見つかった。しかも発表を2度も訂正。その度に修正箇所は大幅に増えた。さらに、その発表の一部は対処したように数値を改竄していた。もう組織としては終わっていると思わせるには充分の内容だった。
 そうこうしてるうちにJR北海道の経済的困窮が明らかになってきた。線路は長いのに人口密度は低く、さらに厳しい冬。素人目に見てもやっていけるはずがないことは明らかだった。それでもJR北海道がやっていけたのは、国鉄の分割民営化の際に基金が設定され、その基金独立行政法人に法外な金利で貸し付けていたのである。実質上の補助金である。この収益が金利の下落により半減した。困窮したJR北海道は厳しいコストダウンによりなんとかごまかしてきた。しかし、いつの間にか安全よりも経済的理由が優先するようになった。そして、それが隠しきれなくなり、鉄道事業者としての資質が問われるような事態に陥ったのである。
 安全を犠牲にするなんて信じがたいのだが、一部報道によれば、力を持つ組合がそういう行為に及んだとの指摘もある。技術的なことを現場が気づかないはずがない。もし、現場が気づかないなら本当に腐っているので、今すぐ廃業した方がいい。そんなことがないなら、原因は組合で間違いないだろうと私は確信している。人が足りないとかお金がないとか理由があるにせよ、安全を政争の具にするなんて言語道断である。今日の報道によれば、データ改竄して原因究明を邪魔した社員を捕まえるようである。こんなとこにも今回の異常さが現れているではないか?
 著者は対策として「運賃の値上げすべき」と言っている。えっ?そんだけ?客が減るじゃん。せめて「鉄道はインフラだから、民間がやるべきではない。外国のように税金を投入すべき。フランスの交通権とか参考にせよ」と主張して欲しかったのだが?この著者は銀行出身である。お金の計算は得意のようだが、無形の効用については気が回らないのか?この本の最後で、JR九州の元社長にインタビューしているが、最初は違う題名だったのに「JR崩壊」に変更して、かなり怒らせたようだ。そりゃ部外者にこんな題名つけられたら関係者は怒るよなあ。
 2日で1回読んだ。前半は著者の主張があり面白いが、後半はインタビューでいかにも急いで作りましたみたいな。しかも、そのインタビューの方が面白そうだから困る。新書はロクなのがないと改めて思った。